せつか

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1/22/2025, 3:19:40 PM

ギフトには二つの意味があるという。
一つは贈り物。
一つは、毒。

たとえ望んで与えられたものだとしても、それが自分にとって毒になるか薬になるかは分からない。
幸福をもたらすものを望むか、毒になり得るものを望んで自らを戒めるか、それともそのどちらになるとも知らぬままそれを望むか。

〝祝福をあたえよう〟
その言葉の真の意味を、よくよく考えければならない。
その贈り物を与えられた時、何がもたらされるのか。
薬になるのか毒になるのか。
枷になるのか剣になるのか。
よくよく考えて答えなければならない。

そうして私が出した答えは·····


END



「あなたへの贈り物」

1/21/2025, 3:55:20 PM

とある樹海では磁石がきかなくなるらしい。
そう本に書いてあったけど、実際に行ったわけではないから分からない。
別の本には磁石がきかないというのは都市伝説だ、とも書いてあった。
どちらが正しいかは分からない。

もし私がこれから樹海に行くとしたら、果たしてどちらを信じるだろう?
指針となる何かは私の中にあるだろうか?

方向を定め、道を選び、進む為のみちしるべ。
誰かの言葉、験担ぎ、蓄えた知識。
私の羅針盤はなんだろう。
そしてその羅針盤は、どれだけ信用出来るのだろう。
積み重ねた何もかもが、これからの糧にもなる。
他者を、自分を、信じるに足るだけのものを積み上げられているか。

こんな時、人生を荒波に例える妙を思い知る。


END


「羅針盤」

1/20/2025, 3:58:07 PM

選び取った道を後悔しているわけではない。
共に歩くと誓った相手の言葉を信じていないわけでもない。

ただ、ふとした瞬間に振り返ると。
幾度も幾度も繰り返してきた、血に塗れた過去がぽっかりと口を開けて待ち構えている。
私の罪業を知っている過去達は、ぽっかり開いた奈落の底から赤く染まった両手を伸ばして、私の足に、腕に絡みつく。
「幸せになれるとでも――?」
「私達を振り切って生きられるとでも――?」
その声に私は応える術を持たず、ただ立ち尽くすことしか出来ない。
歩き始めた足は結局こうして、枷をつけられたかのように引きずることしか出来なくなるのだ。

「××××××」
名を呼ばれた。
差し伸べられた手。向けられた視線。
私のすぐ後ろで口を開けていた過去は、その声と視線の力強さに瞬く間に消えてしまう。
「行こう」
たった一言。
この短い言葉で私は再び歩き出そうと思い直す。

幸せにはなれないだろう。
過去を振り切ることなど出来ないだろう。
それはきっと、相手も同じで。
けれど、だからこそ。
共に歩く意味があるのだと、差し伸べられた手を取りながら考える。
私はきっと、これからも。
明日に向かって歩く、でも。
何度も歩みを止めるだろう。
追いついて来た過去に捉えられ、身動き出来なくなるだろう。
それでも共に歩くと誓ったものがいる限り。

この選択は、きっと間違っていない。


END


「明日に向かって歩く、でも」

1/19/2025, 3:14:35 PM

貴方はかけがえのないただひとりの貴方だから。
世界にただひとり、誰も代わりになんてなれない貴方だから。

この言葉はある意味正しくて、ある意味間違っている。この言葉が正しいのなら、なぜ世界中であんなに簡単に生命が失われるのだろう。かけがえのない筈の生命がこんなに簡単に失われるなんて、それが世界の正しい在り方なら、言葉の方が間違っている事になる。

ただひとりの君へ。なんて。
夢のような絵空事と捉えるか、手を伸ばせば叶う現実と捉えるか。
それを現実にしたくてきっとみんな、足掻いてる。


END



「ただひとりの君へ」

1/18/2025, 11:44:28 PM

明日のメニュー、遠い国のお祭り、深海に棲む巨大生物、最新のヒット曲、300年前の画家のスケッチ、高山植物、絶滅した鳥の映像、戦車の歴史、災害の記録、パリコレの舞台裏、美味しいコーヒーの淹れ方、心霊写真、宗教儀式、地中の鉱物、宇宙の果て、見えない光線、人間には聞こえない音。

薄い板一枚なのに、小さな窓に検索する言葉を入れたらたちまち答えが返ってくる。
表示されたものが正しいとは限らないけれど、0だった知識の層に0.1でも情報が積まれれば、それは確かに私をつくる何かになる。
この薄い板はまるで宇宙だ。
こちらが言葉を知れば知るだけ、検索出来る幅が広がる。手のひらに乗る宇宙から、自分の内に広がる宇宙へ。そうして巡って生まれたものが、生きていく為の技術や、心を満たす芸術や、折り合いをつける為の知識として表出されていくのだろう。

宇宙には沢山の電波が行き交っている。
手のひらの宇宙も同じ。それをどう発信し、受信するかは私次第だ。


END


「手のひらの宇宙」

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