せつか

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2/7/2024, 11:28:50 AM

仕事中に心の中で思っていること。
何度説明してもPCの使い方を覚えない親に思っていること。
やたら声がでかくてボリュームのコントロールが出来ない同僚に対して思っていること。
ガサツな父親と自意識過剰な母親に対して思っていること。
片付ける事を知らないやつに対して思っていること。
人の話を聞かない同僚に対して思っていること。
口癖が「すいません」で何に対して謝ってるのか分からない人に対して思っていること。

心の中に育っているドロッドロの悪罵と悪口と罵詈雑言。

言霊なんてホントにあるかどうか分からないけど、ホントになったら怖いから書かないし言わない。


END


「どこにも書けないこと」

2/6/2024, 12:29:48 PM

気にしなければいいのだ。
実際、朝や昼は気にならないのだから。
チッ、チッ、チッ、チッ·····。
どこにでもある時計の音だ。
秒針がゆっくり回り、12を指して通り過ぎる。一分経過したことを告げた針はそれを六十回繰り返して一時間を、更にそれを二十四回繰り返して一日が終わることを告げる。
チッ、チッ、チッ、チッ·····。
電池が切れるまでそれは続く。電池を交換すれば更に長く、繰り返し時を刻み続けるのだろう。
チッ、チッ、チッ、チッ·····。

深夜。
家族が寝静まり、テレビも消えてリビングには私一人。時計の針がか細く鳴くのを聞きながら、私は読みかけの本のページを開く。
チッ、チッ、チッ、チッ……。
「·····」
数ページ進んだところでパタリと本を閉じる。
チッ、チッ、チッ、チッ·····。
夜、一人でいるとそれは私をからかうようにやけに鮮明な音となって耳に届く。
ただの時計だ。時計はただ時を刻むだけ。なのにあの音は、私に何かを急かすように神経質な音を響かせる。

タイムリミットなど無い。(本当に?)
この家であと何度二十四回を繰り返すのか。(永遠に?)
壁にかかったあの時計のように、このままこの家で朽ちていくのか。(それが人の生でしょう?)
チッ、チッ、チッ、チッ·····。
時計の針が更に私を追い詰める。
――決行の日を、決めなければ。

深夜。
一人で本を読む私は、時計の音を聞く度にこうした昏い妄想に取り憑かれている。
チッ、チッ、チッ、チッ·····。
妄想で済んでいるならまだ大丈夫だろう。
「決行の日を決めなければ」
チッ、チッ、チッ、チッ·····。
少しずつ音は大きくなっている。
昏い妄想はやけにリアルな夢になり、言葉と行動で私を突き動かす。

あぁ、時計の針が、聞こえてこなければ··········。


END


「時計の針」

2/5/2024, 1:58:35 PM

好き、というだけではないのです。
笑顔が好き、声が好き、背中が好き、指が好き。
それだけではないのです。
一緒にいると癒されて、楽しくて、考えさせられて、時々イライラさせられて。
自分のあらゆる感情を、揺さぶられているのです。
自分の中にこんなに色々な感情があるなんて、私は今まで知らなかったのです。

あなたの隣にずっといたい。
あなたの一番大切な人になりたい。
あなたと同じものを目指したい。

こんなに何かを強く思うのは、これが初めてなのです。

こんな私の気持ちを知ったら、あなたはどんな顔をするのでしょう?

知りたい、でも怖い。

だから私は、ふとした事で溢れる気持ちがこぼれないよう、そっと唇を閉じたのでした。

END


「溢れる気持ち」

2/4/2024, 12:38:19 PM

付き合い始めの頃、キスは嫌いだと言った。
出来れば手を繋ぐのも好きじゃないし、そういう事をしたいと思わない。そう言うと、彼は数度瞬きをして「そっか」と答えた。

数日後、「でも俺達、恋人でいいんだよね?」と聞いてきたので逆に聞いてみた。「おかしいと思う?」
彼は少し考えるように天井を見上げて、それからこちらを向くと二カリと白い歯を見せて「ううん」と答えた。

彼との時間は心地いい。
付かず離れずの微妙な距離感で、私の歩調に合わせてくれる。手も繋がないしキスもしないけど、私達は確かに恋人同士だ。
あの時の「ううん」という彼の答えが本心なのか、それとも私を気遣っての事なのか、それは分からない。
キスもしないし手も繋がない私達は、それでも確かに恋人で、世間の恋人達がしていることをやらない以外は特に大差が無い。

彼はキスをしたいのだろうか?
もし彼がキスがしたいと言ったなら、私は応えてあげられるだろうか?
想像して、吐き気がして、彼がそう言わないでいてくれる事を祈った。

たった一つ、キスという行為で私達の関係が破綻してしまうことを、私は今も恐れている。

END


「Kiss」

2/3/2024, 3:29:10 PM

1000年後の世界はどうなってるだろう?
最近、実は今とあんまり変わってないんじゃないかなと思うようになってきた。
とりあえず、昔のB級SF映画みたいに人の姿が全く違うモノになってる、って事は無い気がする。
環境は大きく変わっているかな。
海面上昇とか温暖化とか砂漠化とか、今ある色々な問題が解決していたら、逆に緑が増えているかもしれない。

紫式部や清少納言は、自分が書いたものが1000年先も残ってて、読まれてるなんて想像したのかな?
あの頃生きてた人達と、今生きてる私達、多分そんなに変わっていない。
怒って、泣いて、笑って、恋して、食べて。
十二単を着て物語を書いた人も、宇宙服に身を包んで月へ旅立つ人も、きっと変わらない。勿論、ジーンズでショッピングモールに行く人も。

「ちょっと月まで行ってくるね」
小旅行に行くような気安さで、カバンに「竹取物語」を忍ばせて。

なかなか楽しいかもしれない。


END


「1000年先も」

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