表が出たら告白
裏が出たらもう少し先延ばし
意を決しコインを軽く宙へと放る
ペシッ
乾いた音を立て手の中に捕まえたコインはじんわりと温かい
恐る恐る開いた手の中には表のコインが私の顔を映し出す
息を飲み私は慌ててコインを裏返した
【裏返し】
鳥のように綺麗な声で鳴いてみたい
鳥のように自由に生きてみたい
鳥のように可愛がられたい
鳥になって誰にも気付かれずにここからどこか遠くへ飛び去ってしまいたい
引っ込み思案な友達の口癖だ。
本当に?
あなたの声も素敵よ
自分はここまでしか出来ないって決めつけてない?
私はあなたが大好きよ!
だからお願い黙って居なくならないでね
【鳥のように】
さよならを言うまえに
これだけは言わせて
私をみつけてありがとう
優しくしてくれてありがとう
結婚してくれてありがとう
一緒に居てくれてありがとう
私を幸せにしてくれてありがとう
あなたに沢山のありがとうを贈るよ
生まれ変わってもまたあなたと一緒に居たいな
だから私が生まれ変わるまで待っててほしい
それまで少しの間、さよなら
【さよならを言うまえに】
今日も真っ先に姉に会いに行く。
おはようと笑いかけると姉も笑顔を返してくれる。
悲しい事があると一緒に泣いてくれるし、楽しかったことも一緒に笑ってくれる私の大好きな姉。
事故で亡くなってしまった姉に会いたくて、姉と瓜二つな私は今日も鏡を見るの
【鏡】
「結花まだそれ持ってたの?そんなのさっさと捨てちゃいなよ」
放課後、各々の部活動場所へ向かう生徒達によって空いたクラス教室で今日の予習をしようとノートと教科書を開いた私の隣の席へ親友の美紅は腰掛け、私が握っているボールペンを見るとげんなりとした様子をみせた。
「だってまだインクは出るし捨てるなんて勿体ないかなって」
「いやいや、それ見る度にあいつのこと思い出したらイライラしちゃうって」
「確かに大輝くんのことは思い出すけど」
「でしょ〜!誕プレで貰ったものだろうが新しい女に乗り換えたクズ男からもらった物なんて捨てな」
そう。このボールペンは元彼の大輝くんから1か月前の私の誕生日プレゼントにもらったものだ。
「結花って名前にぴったりだろ?」
照れながら彼から渡されたハッピーバースデーと印字された包紙を開けると持ち手の部分に花が中にあしらわれた可愛らしいボールペンが入っていた。
「かわいい...。これ本当に貰ってもいいの?」
「当たり前だろ。大事に使ってくれよな。誕生日おめでとう結花」
嬉しすぎてどうにかなってしまいそうだ。
はにかみながら私の頭を撫でてくれる彼を盗み見し自然と口角が上がってしまう。
この時が永遠に続けばいいのにと願った。
でも大好きな彼は私の事なんてすぐに飽きてしまった。私は未だに大輝くんへの恋心もボールペンも捨てられないのに。
【いつまでも捨てられないもの】