koto

Open App

「結花まだそれ持ってたの?そんなのさっさと捨てちゃいなよ」
放課後、各々の部活動場所へ向かう生徒達によって空いたクラス教室で今日の予習をしようとノートと教科書を開いた私の隣の席へ親友の美紅は腰掛け、私が握っているボールペンを見るとげんなりとした様子をみせた。
「だってまだインクは出るし捨てるなんて勿体ないかなって」
「いやいや、それ見る度にあいつのこと思い出したらイライラしちゃうって」
「確かに大輝くんのことは思い出すけど」
「でしょ〜!誕プレで貰ったものだろうが新しい女に乗り換えたクズ男からもらった物なんて捨てな」
そう。このボールペンは元彼の大輝くんから1か月前の私の誕生日プレゼントにもらったものだ。

「結花って名前にぴったりだろ?」
照れながら彼から渡されたハッピーバースデーと印字された包紙を開けると持ち手の部分に花が中にあしらわれた可愛らしいボールペンが入っていた。
「かわいい...。これ本当に貰ってもいいの?」
「当たり前だろ。大事に使ってくれよな。誕生日おめでとう結花」
嬉しすぎてどうにかなってしまいそうだ。
はにかみながら私の頭を撫でてくれる彼を盗み見し自然と口角が上がってしまう。
この時が永遠に続けばいいのにと願った。

でも大好きな彼は私の事なんてすぐに飽きてしまった。私は未だに大輝くんへの恋心もボールペンも捨てられないのに。


【いつまでも捨てられないもの】




8/17/2024, 1:26:47 PM