高く高く
真っ青な秋晴れの空。
いくら手を伸ばしても届かない。
高く高く、この空のように。
僕も伸びる!大きくなる!
それまで、ちゃんと上を向いて。
この道を歩いていこう。
子供のように
原っぱにたくさんのトンボが飛び交う。
「待ってな。今捕まえて見せるから」
そう言って、あなたは棒に止まったトンボに向かって指をぐるぐる回して見せる。
その脇に私はそろそろと歩いていって・・・
パッと一瞬でトンボの羽を掴んだ。
「それ、効かないらしいわよ」
あなたは私の捕まえたトンボを見て、驚くような、嬉しいような複雑な表情になる。それから、はっとして
「次はもっと大きくて、きれいなトンボを捕る」
と怒ったように言った。
まったく、子供みたいなんだから。そこがいいんだけど。
前回の子供の頃はの続編です。(みけねこ)
放課後
夕焼けの教室に二つの人影。
日直で学級日誌を書く私と、出し忘れた課題に取り組む男子生徒。
互いのシャープペンの音が響く。
「そっち、終わった?」
「あと少しで終わりそう」
普段話さない二人の会話は、そっけない。
私の方が先に書き終わり、席を立って帰る準備をする。
「もう帰るの?」
「終わったから」
「ーもう少しで俺も終わるから、一緒に行かない?」
暗くなりつつある中でも分かる、真剣な表情。
「・・・じゃあ、あと少しだけ待つ」
そう言った途端、嬉しそうな表情になって、急いで課題を切り上げる。
二人して、放課後の職員室を目指した。
結局、帰り道も一緒に帰り、翌日クラスメイトから揶揄われることになるが、これはまた別の話。
カーテン
いつもは閉じているカーテンの窓。
今日は、しっかり開いていた。
隣の窓の僕は、珍しいと思って、じっと見つめた。
パッと一瞬、長い黒髪の女の子が窓を覗く。
彼女は僕に気づいて、再び姿を見せてくれた。
窓越しに僕らは見つめ合う。
彼女の黒髪が風にたゆたう。
きれいだと思って、その髪先を目で追いかける。
彼女が僕の目線に気づいて、くすりと笑う。
また目が合って、どちらからでもなく、微笑んだ。
涙の理由
朝、目が覚めたら、涙が出ていた。
鏡の中には、目元を真っ赤にした自分がいる。
なんで泣いたのかわからないけど、とても悲しかったんだと思う。
「なんで、泣いているの?」
私を見て、そう聞いてきてくれる君がいる。
もしかしたら、涙の理由は悲しみではなく、嬉しさかなと思うことにした。