別れ際に
「それじゃあ、明日また学校で」 「・・・うん」
途中まで同じ通学路。このT字路で別れる前の挨拶。
「・・・どうかしたのか?」 「えっ!?」
「いや、なんか言いたそうだったから」 「!」
そいつは少しもじもじした後、鞄の中から何か出した。
「えっ、これ俺に?」 「そう、誕生日だって聞いて」
渡されたのは小さな箱。ふわりと甘い匂いがしている。
「作ってくれたの!わざわざ?」 「・・・うん」
「うわー嬉しい!!」 「ーーーっ!」
それじゃ と言って、そいつは足早に去っていく。
またなー と返しつつ、そっと箱を開けてみる。
ー好きです。
「・・・えっ?!」
とある別れ際に、重大なものをもらった男の子の話。
通り雨
ぽつ、と顔に雫が垂れたと思ったら、ザァッと雨が降り出した。
慌てて近くの店先に入って、鞄の中の折りたたみ傘を探す。底の方からやっと引っ張り出した時、雨は上がっていた。 通り雨だったのだ。
なんだか損した気分になり、折りたたみ傘を再び鞄に入れて、空を見上げると、大きな虹がかかっていた。
「・・・いいことありそう」
店先から出ながら、そんなことを呟いた。
とある日の通り雨に降られた人の話。
秋🍁
紅葉を見に来て、その美しさではなく、隣の彼女の横顔に見惚れていた僕は、ふと気づいて、
「寒くないですか?」
と声をかける。
「ほっぺがモミジみたいに真っ赤になってます。風も冷たくなってきてますからね」
彼女寒そうな首元を見て、僕はためらうことなく自分の首に巻いていたマフラーを外しだし、くるりと彼女の首に巻きつける。
彼女の顔がさっきより赤くなったのを、見ないようにしつつ、
「そろそろ帰りましょうか。あと、あったかい飲み物でも買ってきます」
自動販売機の方に向かう。僕の顔が赤くなっていることに彼女が気づいていないことを願って。
とある日の紅葉を見に来た僕と彼女の話。
前回の秋恋の続編です。(みけねこ)
窓から見える景色
ー天気によって、時間によって、季節によって、気持ちによって、窓から見える景色は変わって見える。
同じ場所を見ているはずなのに、面白い。
「今日はどんな景色かな」
今だけ、私だけの景色を見に行こう。
形のないもの
金魚が死んだ。 夏祭りの金魚すくいでとった金魚だ。
赤い尾鰭がひらひら揺れているのがきれいで。
エサやりの時間以外にも、よく眺めていた。
朝起きたら、水槽の水面に腹を浮かべて死んでいた。
死んだってのに、赤い尾鰭がひらひら揺れていた。
すくっても動かず、ただの命の抜け殻だった。
小さな庭に埋めてやって、手を合わせた。
形のない、命というものに、少し触れた気がした。
前回の花咲いての続編?です。小さな庭くらいしか重なる部分がありません。(みけねこ)