鳥かご
可愛がっていたカナリアを、鳥かごから逃してしまった私に、兄は何と言ったのだったかー
「なぜ逃げようとするんだい?僕はお前に傷をつけたくないから、こんなに素敵な鳥かごを用意させたのに」
家から逃げようとした私に、兄が微笑んで私のために作らせた鳥かごを見せたときには絶句した。
「兄さんの気持ちはわかるけど、私は外に出てみたいの。・・・鳥は飛ぶための翼があるのになぜ外に出したらいけないの?」
私の言葉に、兄はため息をついて、
「前に話したことがあったんじゃないか?所詮、かごの中で生きてきた鳥だ。外の世界で生きていけるわけがない、と。・・・お前は元からかごの鳥なんだよ」
と残酷なことを言う。
今にも目の前にある鳥かごに入れようとする兄に対し、
私はーーー
友情
この頃、ふと思い返す。
君の声、君の手の温もり、君の背中。
春は桜舞い散る中、お花見をした。
夏は入道雲の下、キンキンに冷えたラムネを飲んだ。
秋は落ち葉を蹴散らして、追いかけっこをした。
冬は雪が降る中、霜焼けになるまで遊んだ。
記憶の中に残っている君との思い出は、鮮明だ。
スマホの連絡先に登録されているのに、今の君とはあまり話さない。前に話した内容も、霞がかかったようにぼやけている。この頃思い返すのは、君との友情がそうさせるんだろう。
前回の友だちの思い出の続編です。(みけねこ)
花咲いて
小学生の時に育てていたアサガオ。
とれた種を小さな庭に植えたら、毎年花が咲くようになった。
ほとんど放っておいて、ツルが伸びてきたら支柱を刺すぐらいしか世話をしていないのに、植物の力は恐ろしく
年を追うごとに、アサガオの数が増えているような気がする。
窓の外には、鮮やかな紫、赤、ピンク、青。いろいろなアサガオが咲いている。
ふと思い立って、ほこりだらけのスケッチブックを取り出した。
「久しぶりに、アサガオの観察でもしようかねぇ」
スケッチブックに、色鉛筆。サンダルをつっかけて。
ー夏が始まる。小学生の頃に戻ったような、暑い夏が。
もしもタイムマシンがあったなら
「ねぇ、タイムマシンがあったなら、あなたはいつの時代に行きたい?」
SF小説を眺めながら、君が問い掛けてきた。
ー・・・先に君の意見を聞きたい。
ーえ〜、答えてよ〜!
「私だったら、江戸時代!身分の差別はあったけど、基本的に自由だったんだって!それに長く続くから安定感バツグンだよー!」
ーふーん・・・。
ーさぁ、私は話したんだからあなたの番だよ!
「俺だったら、近未来を見に行きたいかな」
ーえっ、未来に行くの!?
ー・・・悪いかよ。
「・・・気になるじゃん。俺と君が一緒にいるのか、いたとしたら幸せなのか。まぁ確認だけど・・・」
・・・。 ・・・。
ードーン!!
ーうおわっ?
「当たり前じゃん!ずーっと一緒だもん!幸せだもん!」
君の温もりを背中に感じながら、しっかりと頷いて。
タイムマシンがあってもなくても、その近未来がいずれ来ることを確信した。
今一番欲しいもの
あるところに、飼い主想いの優しい犬がおりました。
立派な体、美しい毛並み、優しい表情。
それはそれは、良い犬だったので、犬好きの神様が目をとめて、
「お前に、今一番欲しいものをやろう」
と言いました。
さぁ、犬は困りました。突然欲しいものを聞かれたので、欲しいものがすぐに思いつきません。さんざん悩んで、
こう答えました。
「私の飼い主は、今とても疲れています。以前はあんなに明るく笑っていたのに、今はつらくて、悲しそうな顔をします。私に何かできたらいいのに何もできません。今、私の欲しいものはありませんが、私の飼い主に休める時間をいただけませんか?その時間で私が飼い主に笑顔を取り戻したいのです」
やはりお前は飼い主想いの良い犬だと、神様は喜んで、飼い主にたっぷり休める時間を与えました。
その後、たっぷり休める時間をもらった飼い主と犬は今までの疲れを取り、犬は約束通り飼い主に笑顔を取り戻して見せました。それから犬が寿命で死ぬまで、ずっと一緒に、幸せに暮しました。 おしまい