これまでずっと暗いところにいた。
私は目が見えない。
友達が誰もいないし、手を差し伸べてくれる人がいなかった。誰1人、私に話しかけようとしない。
毎日棒を持って歩く。たまに誰かに当たることもあった。その度に謝って頭を下げて。
学校では障害持ちだとかキモイとか言って先生すら
何も言わないんだ。
でも、今は違う。
支えてくれる人がいて、毎日学校まで車で送ってくれたんだ。それで手術で治ることが分かった。
今まで見えなかった世界。
やっと見えるようになって、学校に行くのもひとりで行けたし、学校の子からも嫌がらせは言われなくなった。先生からも色々謝られた。
目が見えなくても、音は沢山聞こえるんだよ
また通知だ、何回も何回もくる。
こんなクラスの陰キャがグループLINEに招待されたと思ったら悪口かよ……
『キモくね?ww』
『グルラに招待されて嬉しくなっちゃってw』
毎日こんな言葉が飛んでくる。
いじめなんて相談したくないし、言わないけどさ、
いじめをされた人間の将来を奪うかもしれないのは、
いじめをしているあなただよ。
変わらない日常。
変わらない私の頭。
どんだけ勉強しようとしてもだらけてしまう。
それでいい点取れなくて泣くとか……馬鹿だな私は。
もうきっと、いい高校なんか行けない。行きたい高校も。母親に言われた言葉が頭にくっついて仕方がない。
「あんた、その成績であの高校は無理でしょ。もうちょっと行けそうな高校に志望したら?」
そんなのわかってる。自分の成績が劣っているなんて
でもさ、まだ希望を持たせてよ。中学2年で諦めたくない。
お願いだから────
商店街 #2
こんな食生活...栄養失調になって死ねって言うのか...?
僕は配給で貰ったものしか食べられない。しかもミルクなんて、大嫌いだ。
みんなお国のためにって...すごいよ...僕は納得できない。
それに毎日のように空襲警報がなっている。
時は1945年8月6日。
そう、あの恐ろしい広島原爆の日だ。
午前8時15分。
僕は一瞬で光に包まれた。一瞬で身体中が痛みと熱気で包まれた。
目が覚める。
重い体を起こして立ち上がる。その瞬間、僕はびくりとした。いくつもの複雑な感情のなかにまず痛みがあった。動かない体。身体中やけどだらけだった。今までになかった痛みにも驚いていたが、本命はこっちだ
ーーー目の前に広がる景色。
皮膚に服がくっついている人、川に飛び込んだ人、死体の山、皮膚が溶けている人。原爆の当時の温度は約3000度らしい。
まるで世界が終わったみたいだ。
商店街 #1
(商店街や大通りの名前など全てフィクションです。)
ざっ。ざっ。
自分の足を引きずりながら歩く音だけが響く北大通り。
周りを見ると当たり前のように転がっている死体、街灯なんて1本もなくなってしまったこの商店街。
そしてこんなにボロボロになっても止まない、
空襲警報だ。
(ウゥーー)
「…また……まただ。」
今日空襲が来たのはこれで3回目...。周りには人なんていないのに。街灯なんて無いのに。
こんなところ襲撃して何がある?
そう、考えながら14歳の颯介は防空壕へ行った。
今日、6月11日は颯介の誕生日。家族と一緒に過ごしていた防空壕で、今は1人、配給でもらったミルクを飲んでいた。
「誕生日おめでとう。」
颯介はひとりで呟いた。
ミルクでは満足出来なかった颯介はまた呟く。
「軍粮精、食べてみたいなぁ......今日は僕の誕生日なのに...」
軍粮精(ぐんろうせい)。敵国語ではキャラメルだ。
配給は主にミルクと米だけ。颯介は一つだけ大嫌いな言葉があった。街には看板も立ててある、
「贅沢は敵だ」