あたたかいね
あなたは私のことを子ども体温だって言う。失礼だと思う。基礎体温が高いと言ってほしいものだ。
冬の寒い日には人のことをカイロ代わりにして抱きしめるのはやめろって何回言えばわかるんだか。
こたつに入ってみかんを食べてる私の邪魔をするな。
「あたたかいね」
耳元で極上の甘い声で囁くのもやめろ。馬鹿みたいに鼓動が早くなるんだから。
ムカつく口に酸っぱいみかんを突っ込んでやった。
星のかけら
瓶の中で煌めく宇宙をみる
彩りの結晶が光を浴びて七色に色を変える
手のひらの上に星のかけらを広げたら
私だけの宇宙が広がった
ねえ、知ってる?星って甘いんだよ
Ring Ring…
一回、二回、三回……
あっ、出た
気づけばあなたが受話器越しに出るコール音を数えるようになっていた。
すぐに出た日は電話を待っていてくれたのかなとか、出るのが遅い日は忙しかったかな、もしくはお風呂だったかな、なんて考えてしまう。
メールでのやり取りは嫌いじゃないけど、やっぱりあなたの声が聞きたい。あなたの音色を聞くだけで疲れが吹っ飛ぶから。ちょっと大袈裟かな。でもどこかほっとして、肩の力が抜けていくのは本当のこと。
今日もまたあなたへと続くコール音を聞く。
ring ring……
一回、二回、三回……
もしもし?
追い風
どこまでも進んでいく。ぐんぐんと。
天高く上昇して気づいたら地平は遥か遠く。
繋がった糸を離されたらもっともっと登っていけるのかな。
この青々とした空よりもさらなる宇宙へ。
噂で聞いたお餅をつく兎にも会えるかもしれない。
追い風にのってどこまでもどこまでも進んでいった。
君と一緒に
砂浜を一歩一歩踏んで足跡を残していく。ふたりで並んで歩くと寄り添うような後が砂に刻まれた。
その後を波が攫っていって、寄り添った足跡が消える。後ろ背に残念がったのは内緒にしておこう。
握ってくれた手に少し力が入って、どうしたなんて聞く君に、なんでもないって小さな嘘をつく。
あの日と同じように繋いでくれる手の温かさをずっと独り占めできることが嬉しい。独占欲が強いなんていわれそうだけど、他人にいわれたって痛くも痒くもない。
君がやめてほしいというならちゃんとやめるつもりだから問題ないと自分を肯定することにした。
これからも君と手を繋いで歩いていきたい。どこまでも一緒にふたり寄り添って。