今すぐ飛んでいきたい。どこか遠くの方へ。貴方がいないところなら、どこでもいい。これ以上貴方と一緒にいたらきっと困らせてしまうから。どこか遠くに旅をしに行こう。貴方のことを忘れてしまうくらいの速さで全てを放り去ってしまおう。貴方との記憶も貴方への想いも全て。全て捨てて羽ばたこう。それが私にできる唯一の償いなのだから。
#鳥のように
別れ際、君は涙を流した。その涙の意味が私には痛いほどわかっていたし、君もそれをわかっていたのだろう。涙を止めようと強く瞼を擦る君の手を抑え、目元をそっと拭う。ハッとするような大きな瞳と目が合う。私を見つめるその瞳を覆い隠すように私は君を抱きしめた。君がこれ以上不安にならないように、これ以上涙を流さないように。しばらくしてゆっくりと体を離した私は、別れの言葉を小さく呟いた。
#さよならを言う前に
ただのキーホルダー。名前のイニシャルが入っているだけのただのキーホルダー。貴方があまりにも笑って選ぶから、特別な気持ちになって買ったもの。今はもう連絡もとらないし、数年会ってない。このキーホルダーを見るたびに、貴方の笑顔が脳裏によぎり捨てられない。いつまで経っても思い出が捨てられない。
#いつまでも捨てられない
自分に自信がなくて、いつも下を向いている貴方。背中が丸まっていて、か細い声。貴方は本当に素敵な人なのに自信のなさが邪魔をしてしまっている。意思の強い瞳、可愛らしい笑顔。もっと自分に誇りを持って。貴方の伸びた背筋、人を見る真っ直ぐな瞳、柔らかな笑顔。それを見るとき、私はとても誇らしい気持ちになる。貴方はとっても素敵な人。
#誇らしさ
貴方の瞳は夜の海。そこに浮かぶ光は月の光に透ける海月のように、ゆらゆらと揺れ動く。その潤む深い濃紺をずっと見ていたくて、その光を私だけのものにしたくて。不思議な引力を秘めたその瞳に惹き付けられて動けなくなってしまうその前に。小綺麗な箱のなかに閉じ込めて、中を静かな濃紺で満たしましょう。小さな夜の海の中でゆらゆら浮かぶ海月を眺めながら満足した私はうとうと夜の海へ船を漕ぎ始めた。