貴方と会う度に、必ず撮る写真。貴方は毎回仕方なく写ってくれるが、その不満そうな表情が愛おしい。時々、貴方は私に問う。その写真に一体、何の意味があるのか。何故、そんなにも沢山写真を撮るのか。私はいつも、特に意味はない。そう、はぐらかす。写真を撮る意味。強いて言うならばこれは記録だ。貴方と私がそこにあった記録。貴方がもし、どこか消えてしまっても私が寂しくならないように。私が消えてしまっても、貴方が寂しくないように。不鮮明になっていってしまう記憶をかたちに残すのだ。貴方には伝えない。来るかもしれない、いつかのための記録なんて、貴方は望んでいないから。それでも私は写真を撮らずにはいられない。少しでも貴方といたその時間を、愛しさを、忘れたくないのだ。
#記録
いつの間に灯った心の中の小さな小さな想いは、私の心をゆっくり溶かしていくように少しずつ、少しずつ燃えていく。焦がれるような、激しいものではなく、本当にぽつりと小さな、今にも消えてしまいそうなほど弱く揺れる想い。ゆらゆらとくすぐったく揺れる、私の想いは。私の心を溶かしきったら、ひそかに消えてしまうのでしょうか。
#キャンドル
あの日、別れた人と寄りを戻す。ふとそんな妄想に浸る夜がある。私を呼ぶ優しい声、柔らかな笑顔。そんなことばかり脳裏に浮かんでは消えていく。また一緒になれたとして、滑りやすくなってしまったあの人の手は私をしっかりと抱きしめてくれるのでしょうか。あの人は、なんと言っていたか。私が聞いたあの人の最後の声は、涙の音でぼやけて消えてしまった。最後、本当に最後の別れ際、あの人の笑顔はまるで泣いているようで笑っているようで。最後の笑顔が頭に焼きついて、離れない。
#別れ際
耳の奥で、波音が響く。暗くて静かで深い夜の海。
私の頭の中にある海は、誰にも見えないし感じられない。私だけの居場所。嫌なことがあったら私はここに来る。独りで波音を聴きながら、海に漂う。私だけの時間。誰にも邪魔なんかさせてやらない。
#貝殻
些細なことでも、話してほしい。くだらない話だっていい。馬鹿だなって、何の話をしているんだって笑い合いたい。真剣な話だっていい。いつまでだって寄り添って話を聞こう。君は何も語らないでいってしまった。あの時、引き止めていれば。あの時、些細なことでも会話していれば。もしかしたら、今のようにはならなかったのかもしれない。もっと話したかった。
#些細なことでも