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8/5/2024, 10:27:58 AM

古びて閑散とした人の寄り付かない小さな教会。夕方、18時頃に私はふとそこに立寄ることがある。そこの鐘はどこか歪んでいるのか、独特な音を出す。宗教などそういったものには特に興味はないが、その鐘の音がずっと脳裏に響いているのだ。そうして今日もまた、草深な入口へ足を踏み入れ崩れそうな階段を登る。階段を登りきったところで鐘の音が鳴り出す。時計を見るときっちり18時。目を閉じて、静かに鳴り響く鐘の音に耳を澄ませる。間延びする鐘の音の終わりとともにそっと目を開き、階段を降りる。なんてことない、ただの鐘の音だ。それでもまた来よう、そう思うのは何故なのだろうか。
                    #鐘の音

8/4/2024, 11:55:15 AM

昼下がりのある授業のこと。誰もが興味を持たず、寝ていたり漫画を読んでいたり。窓側の後ろの席に座っている自分も例外ではなかった。でも自分の全意識は前の教壇に立つ、物静かな教師に向いていた。静かだけど通る声、教科書を見る伏せがちの瞳。チョークを持つ整えられた指先から、黒板に書かれる几帳面な字。チョークの音を聞きながらそっと目を閉じる。昼下がりのいつも通りのつまらない授業。自分がいつも楽しみにしている授業でもある。
               #つまらないことでも

8/3/2024, 2:25:46 PM

まだ夜も明けない頃、隣から聞こえる呻き声に私は体を起こした。私の隣で悪夢に顔を歪め、悩ましげに呻く私の愛しい人。毎晩のように夢に魘されている貴方の柔らかく細い髪の毛をそっと撫でる。すると貴方は愛しそうに私の手に頭を擦り付けて、さっきとは違う柔らかな笑みを浮かべる。あぁ、貴方は夢の中で誰といるのでしょう。私の愛しい人。私には決して見せてはくれない穏やかな顔。どうか貴方が目覚めるまで、貴方の想い人の代わりでも良いから傍にいさせて。
                #目が覚めるまでに

8/2/2024, 12:48:24 PM

生きることに最低限必要なものだけ揃えられた簡素な部屋。白く狭く無機質なこの部屋。物音ひとつない冷たい空気に身体が霧散していくようで、わたしは独りありもしない空想に身をすくめながらさらりとしたベットの上で身体の型を保つように丸め、浅い呼吸の中眠りについた。
                    #病室