静寂の中心で
君は本を読んでいて、僕は筆を手に取っている。
わざわざこんなところで会うのも変な感じだと思いながら、いつもと同じようにカフェテリアで相席していた。
特に話したこともないんだけど、空いてるからって理由で僕が先でも君が先でも同じ机を共有する。
この静寂の中心で渦巻いている気持ちは一体何というのでしょうか、
燃える葉
さざんか さざんか さいたなら
たきびだ たきびだ おちばたき
これ、冬の歌だっけ。
中庭の落ち葉を集めながらなんとなく歌っていると、冬のことを思い出す。あの日、落ち葉を集めて、そこにアルミホイルで包んだイモを入れて、チャッカマンか何かで火をつけた。葉っぱの色がすーと変わって、空気がゆらゆらと揺れる。近づけば熱い、でも離れれば何ともない。あったかいってところは全然なかった。
あの日もおんなじ歌を歌っていた。あそこは田舎だったけど、ここは住宅街に囲まれた学校だから火を点けるなんてことはできない。もちろん焼くイモもないけど。
あんなに風景は覚えているのに、イモを食べたのかは全く記憶にないのだった。それを、今似たようなことをすれば思い出せる気がして。とてつもなく惜しいことをしているような、さみしいような気持ちになる。
さざんか さざんか さいたなら
たきびだ たきびだ おちばたき
あたろうか あたろうよ
きたかぜ ぴーぷー ふいている
今はまだ、彼岸花が揺れるだけ。
moonlight
月の光は街に滲んでよく見えないが、カーテンのようだと聞いたことがある。
私が思い出すのはそのとき考えていたことで、土でできたような教会で月光が差すのを眺めている光景だった。
長い椅子に座ったり、分厚い本を枕にして寝てみたり、月光がさしていたところに近づいてみたりして。
その夜に音がないことを忘れていた。
しーんと耳鳴りが聞こえる。ここはきっと夢の中。
その、月の明かりの中。
今日だけ許して
何度も謝ったのにさ、今日だけ許してそれきりやったね君は。次の日にも前の日にも何度もおんなじことでグチグチと責め立てて。最近は言ってないだなんて勘違いして、今日くらいはって毎日文句を言うんよ。
やめようや、そろそろ。なんて思ったって。今日だけでも世界は許してくれやせんのに。
ああ、大嫌いや。君なんかと にならんかったらよかった。
誰か
誰かっていう言葉を見たときにね
助けてって聞こえてきたの
これ、暗い話の読み過ぎだよね。
誰かっていう言葉を見たときにね
whoかな、someoneかなって思ったの
これ、明日のテスト大丈夫かな。
誰かっていう言葉を見たときにね
真っ黒い人影が見えた気がしたの
これ、ちょっと怖すぎない?
誰かっていう言葉を見たときにね
君のことかなって思ったの
これ、この前言ったやつじゃない?
驚かせた責任、ちゃんと取ってよね。