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燃える葉




 さざんか さざんか さいたなら
 たきびだ たきびだ おちばたき

 これ、冬の歌だっけ。
 中庭の落ち葉を集めながらなんとなく歌っていると、冬のことを思い出す。あの日、落ち葉を集めて、そこにアルミホイルで包んだイモを入れて、チャッカマンか何かで火をつけた。葉っぱの色がすーと変わって、空気がゆらゆらと揺れる。近づけば熱い、でも離れれば何ともない。あったかいってところは全然なかった。
 あの日もおんなじ歌を歌っていた。あそこは田舎だったけど、ここは住宅街に囲まれた学校だから火を点けるなんてことはできない。もちろん焼くイモもないけど。
 あんなに風景は覚えているのに、イモを食べたのかは全く記憶にないのだった。それを、今似たようなことをすれば思い出せる気がして。とてつもなく惜しいことをしているような、さみしいような気持ちになる。

 さざんか さざんか さいたなら
 たきびだ たきびだ おちばたき
 あたろうか あたろうよ
 きたかぜ ぴーぷー ふいている

 今はまだ、彼岸花が揺れるだけ。

 

10/6/2025, 10:10:26 AM