今日だけ許して
何度も謝ったのにさ、今日だけ許してそれきりやったね君は。次の日にも前の日にも何度もおんなじことでグチグチと責め立てて。最近は言ってないだなんて勘違いして、今日くらいはって毎日文句を言うんよ。
やめようや、そろそろ。なんて思ったって。今日だけでも世界は許してくれやせんのに。
ああ、大嫌いや。君なんかと にならんかったらよかった。
誰か
誰かっていう言葉を見たときにね
助けてって聞こえてきたの
これ、暗い話の読み過ぎだよね。
誰かっていう言葉を見たときにね
whoかな、someoneかなって思ったの
これ、明日のテスト大丈夫かな。
誰かっていう言葉を見たときにね
真っ黒い人影が見えた気がしたの
これ、ちょっと怖すぎない?
誰かっていう言葉を見たときにね
君のことかなって思ったの
これ、この前言ったやつじゃない?
驚かせた責任、ちゃんと取ってよね。
遠い足音
かたかた かたかた 聞こえてくるのは
僕を置いていった君の足音か
僕を追いかける死の足音か
かたかた かたかた それは遠く
僕は急ぐしかないのだけど
僕は、うまく急げないんだ
かたかた かたかた 聞こえてくるのは
僕を
秋の訪れ
空気が乾燥してきて鼻が痛い。こういう日は秋を通り越してもう冬だな。なんて思う。
けど昨日はなかった彼岸花が今日咲いているあたり、秋としか言いようがないのだった。
暑さも寒さも彼岸までと言うが、本当にそうらしい。
彼岸、この世とあの世が最も近づく日。なんとなく薄ら寒い気がしなくもないかなぁ。
じゃあ、君は面倒くさがりだから、本当は最近のうちにあの世に行ったのだろうか。もう四十九日は過ぎているけど。
動くのが嫌、無駄、めんどくさいって本当に君はうるさくて、その話を聞くほうが面倒だって僕は思ってたんだけど。嫌でも、無駄でもなくて、今さらながらに、真夏の日向水のような時だったと思うんだ。
今は秋、これからどんどん涼しく、寒くなっていく。きっと、次の彼岸まで。
旅は続く
いつのことだか知らないが、旅の話をしよう。
口の奥に空洞を持たない、不思議な生き物の話を。
それは二本の足で歩いていた。
縦長の五角形の箱を引き摺りながらそれは歩いていた。
あるものはそれに靴を与えた。
あるものはそれに調理を教えた。
あるものはそれに肩がけの袋を作った。
あるものはそれが箱を引き摺るのを手伝った。
何人もの人と出会い、途中から線を描きながらそれは歩き続けた。
やがて出発地点である城に戻る頃、それは母なる存在と出会った。
羽を持たないそれを捨てた身勝手な存在だった。
帰らないかというその存在に、それは首を振った。
再び歩き始めたそれにあるものは
それを旅と呼ぶのだと伝えた。
それの旅は続く。
抱えたものが風となっても、また新たなものを抱えて。
それの旅は続く。