旅は続く
いつのことだか知らないが、旅の話をしよう。
口の奥に空洞を持たない、不思議な生き物の話を。
それは二本の足で歩いていた。
縦長の五角形の箱を引き摺りながらそれは歩いていた。
あるものはそれに靴を与えた。
あるものはそれに調理を教えた。
あるものはそれに肩がけの袋を作った。
あるものはそれが箱を引き摺るのを手伝った。
何人もの人と出会い、途中から線を描きながらそれは歩き続けた。
やがて出発地点である城に戻る頃、それは母なる存在と出会った。
羽を持たないそれを捨てた身勝手な存在だった。
帰らないかというその存在に、それは首を振った。
再び歩き始めたそれにあるものは
それを旅と呼ぶのだと伝えた。
それの旅は続く。
抱えたものが風となっても、また新たなものを抱えて。
それの旅は続く。
9/30/2025, 11:55:44 AM