君、僕が生きている人間だと思うかい?
僕の墓を掘り返さないでくれ。中は汚い蛇や虫でいっぱいだろうから。恥ずかしくてとても見せられない。純粋な君のことだから、その意味に気づかないだろうけれど、それでもやっぱり嫌なんだ。
教会の裏の森の奥に、小さな小屋があるだろう。そこには植物を育てて暮らしている夫婦がいる。もうすぐ子供が生まれるだろう。その子と仲良くしてやってくれないかな。僕と遊んだ時みたいに。
15になったらその子と僕の墓の前においで。君はいつだってやり直せる。ずっと綺麗なままでいようね。
終わりが見えた。
破滅を謳歌する君に伝えたいことがある。
もう君はだいぶ堕ちてしまって遠いところにいるんだろうね。僕はもう君の姿を見ることはないだろうけど、言いたいことがあるんだ。
僕は狡をしてしまったんだ。君は僕と天国に行くために罪を償っているというのに、僕はもう諦めてしまったんだ。教会の神様が僕を騙して突き堕とそうとしている。僕は神様を愛してる。君との約束は果たせなくなった。
きっと神様は、君から僕の記憶を消すだろう。それでいい。僕のことは忘れて、破滅でもなんでも楽しんでくれ。けれどもし、終わりが見えてしまった時は、迎えに行くよ。
気分がいいとは言えない。
空が濁って僕らを閉じ込めた時、君は僕を埋めるだけで良かったんだ。目覚めてしまった時、感じた体温が君でなく君が殺したロバの死体で、僕がどれだけ孤独を感じたか、君には分からないだろうがね。
僕は知らなかったんだ。君が世界だったなんて。
願いが叶う時が来た。
深い森の開けた地。聳える十字架の重みに涙が出るほど僕は感動した。十字架を掘り返すと白骨死体と本が出てきた。最初のページを見た。
「おめでとう」
これはきっと僕がここまで辿り着くことが出来たことを称える文だろう。最後のページにはこう書かれていた。
「ここに辿り着くまでに踏み潰した花を忘れるな」
鴉を殺して花畑に埋めてください。
目覚めた時、鴉は鯨になってあなたを飲み込んで
天までとどけてくれます。
鉄砲はしまってください。
それはとても酷いものですから。
白無垢を纏って抱き締めるんです。
鴉はきっと死にますよ。
晴天はやめてください。
神に見つかってしまいます。