小5

Open App
10/6/2024, 7:22:14 AM

『 鏡 』

鏡のなかはどうなっているんだろう。
かがみ。かがみ。かがみ。

最近はそのことばかりが気になって、
まともに講義も受けれない。




鏡のなかに入りたい。
そんな小さな願いから始まったことだった。

ネットで、かがみのなかに入る方法を探していた。
そして、ついに見つけたんだ!

まず、手首を両方とも切る。
そしたら、鏡の前にたち、目を閉じてかがみ、かがみ、かがみと唱える。





はいってからいくつの日をまたいだ?
お腹も空かない。
喉もかわかない。
汗もかかない。

まるで、体の機能が停止し、意識だけが取り残されているようだ。

真っ暗な夜空が今日もまたやってきた。

無機質な空間にその夜空は似ても似つかない。

きらきらとした光を纏う。
そういえば、今日は七夕だったか。




「あ、天の川、、」











自分のその言葉を最後に、視界が暗くなった。

10/5/2024, 4:28:54 AM

『手を取り合って』

ある波の強い日。
君は現れた。
青くて海のような髪色。

波のように白いワンピースを着て、微笑む。



気づけば、踊りませんかと声をかけていた。
妹に似ていた。
昔、突然消えた妹に似ていたんだ。
辛くて、辛くて仕方がなかったから、大分前に記憶の奥底へ押しやっていた。



























甲板の上、波が揺れる中2人の影は踊る。

10/1/2024, 10:52:31 AM

『 あめ 』


夏が来た。
夏休みももう少し。


いくら誘ってもうんと言わない君が、
珍しくいいよと言った時は驚いた。
プールへ行こうと思ったけれど、この時期は人が多いからやめておくことにした。


代わりに、海へ行くことにした。

潮の匂いがする海風。
近くでにゃーにゃーと鳴く海猫。

時折、蟹や宿借が動いているさまが見える。
君が揺れた。
君の周りを舞う花弁がとても綺麗で、
でもどこか寂しげで。
きっと今まで1度もこんな所へ来たことがないんだなと思った。


砂。真っ白でサラサラしている砂。
君がせっかくの花柄ワンピも気にせずに寝転ぶものだから、思わず私も寝転んだ。
すぐ隣。


君が話しかけてきた。

もし、私がいなくなったらどうする?って。

でも、その時私はたそがれていたものだから、聞き取れずにえ?と聴き返してしまった。




君は、少し、苦痛で歪んだような顔を見せた後、なんでもないよと言った。

そっかと素っ気なく返したのが間違いだったのか、君は立ち上がって何も言わずに帰ってしまった。

こんなことになるなら黄昏なきゃよかった。


君を、帰らせるつもりなんてなかったんだけどなぁ


今度会った時にまたなにかお詫びをしよう。


そんな暗く見苦しい気持ちとは裏腹に、
空は真っ青に光り輝き、雲ひとつなく綺麗で、
晴れやかで、君に似ていた。









ベランダから煙草を吸う。
良くないと分かりつつもやっぱり吸ってしまう。

あの時、なんて言うのが正解だったんだろう。

私はまた黄昏ながら考える。




ふと、ぽつぽつという音がしたから、空を見上げてみた。
雨が降っていた。

雨は私を包み込む。



今日はもう、君のことなんて忘れた振りをして早く眠りにつこうと思った。



これでもかというほどに君の髪色に憧れて染めてブリーチしてを繰り返した髪。
君のようなブロンドになりたくて、何度も何度もブリーチしたけれど結局すぐに黒髪へ戻ってしまう。



少しパサついた髪は私の気持ちのように黒く暗く。
そんな髪をきつく縛っている青色のゴムをほどいた


でも、なかなか外すのに手こずった。


どこかで絡まっているみたいだ。
まるで、私が君へ向ける気持ちのように。


むかついた。もう今日はこのまま寝ようと思った。








その次の日から、きみをみることはなくなった。