小5

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『 あめ 』


夏が来た。
夏休みももう少し。


いくら誘ってもうんと言わない君が、
珍しくいいよと言った時は驚いた。
プールへ行こうと思ったけれど、この時期は人が多いからやめておくことにした。


代わりに、海へ行くことにした。

潮の匂いがする海風。
近くでにゃーにゃーと鳴く海猫。

時折、蟹や宿借が動いているさまが見える。
君が揺れた。
君の周りを舞う花弁がとても綺麗で、
でもどこか寂しげで。
きっと今まで1度もこんな所へ来たことがないんだなと思った。


砂。真っ白でサラサラしている砂。
君がせっかくの花柄ワンピも気にせずに寝転ぶものだから、思わず私も寝転んだ。
すぐ隣。


君が話しかけてきた。

もし、私がいなくなったらどうする?って。

でも、その時私はたそがれていたものだから、聞き取れずにえ?と聴き返してしまった。




君は、少し、苦痛で歪んだような顔を見せた後、なんでもないよと言った。

そっかと素っ気なく返したのが間違いだったのか、君は立ち上がって何も言わずに帰ってしまった。

こんなことになるなら黄昏なきゃよかった。


君を、帰らせるつもりなんてなかったんだけどなぁ


今度会った時にまたなにかお詫びをしよう。


そんな暗く見苦しい気持ちとは裏腹に、
空は真っ青に光り輝き、雲ひとつなく綺麗で、
晴れやかで、君に似ていた。









ベランダから煙草を吸う。
良くないと分かりつつもやっぱり吸ってしまう。

あの時、なんて言うのが正解だったんだろう。

私はまた黄昏ながら考える。




ふと、ぽつぽつという音がしたから、空を見上げてみた。
雨が降っていた。

雨は私を包み込む。



今日はもう、君のことなんて忘れた振りをして早く眠りにつこうと思った。



これでもかというほどに君の髪色に憧れて染めてブリーチしてを繰り返した髪。
君のようなブロンドになりたくて、何度も何度もブリーチしたけれど結局すぐに黒髪へ戻ってしまう。



少しパサついた髪は私の気持ちのように黒く暗く。
そんな髪をきつく縛っている青色のゴムをほどいた


でも、なかなか外すのに手こずった。


どこかで絡まっているみたいだ。
まるで、私が君へ向ける気持ちのように。


むかついた。もう今日はこのまま寝ようと思った。








その次の日から、きみをみることはなくなった。

10/1/2024, 10:52:31 AM