ナツキとフユト【27 赤い糸】
「フユトは赤い糸って信じる?」
「赤い糸?」
「ほら、運命の人とは小指と小指が結ばれてるっていう」
「それを言うなら薬指と薬指だろ?」
「えっ、そうだっけ?」
「そうだよ。だから結婚指輪だって薬指にするんだろ」
「け、結婚!?」
「なんでそこに反応するんだよ」
「だってフユトが結婚だなんて言うから」
「結婚じゃなくて結婚指輪だろうが」
「結婚するの?」
「誰と」
「えっ!?」
「…えっ!?」
(つづく)
ナツキとフユト【26 入道雲】
ナツキが窓の外を見て言った
「うわ、すっごい入道雲。ガリガリ君食べたくなっちゃった」
フユトは呆れる
「どういう発想だよ」
「夏つながりだよ。入道雲といえば夏、夏といえばアイス、アイスといえばガリガリ君」
「そうか? 俺は何年も食べてないけど」
「じゃあ、久しぶりに食べようよ。ねえ、一緒にコンビニ行こう」
「う、うん」
(つづく)
ナツキとフユト【25 夏】
「夏生まれだからナツキっていうのか?」
「そう。ひねりのない名前だよね」
「でも、いい名前だと思うぞ。俺だって冬生まれでフユトだし」
「『ナツキとフユト』って、なんか芸人のコンビ名みたい』
それを聞いて笑っていたフユトが、はっとしたように言った
「てことは、もうすぐ誕生日じゃないのか?」
「えへへ、実はそうなんだ」
「じゃ、じゃあ、お祝いしないとな」
「ホント? うれしい…」
(つづく)
ナツキとフユト【24 ここではないどこか】
ナツキがつぶやいた
「どこか、ここじゃないところに行きたいな」
フユトが驚いたように聞く
「えっ、早くここを出たいって話か?」
「違うよー。違うけど、こことはまったく別の場所で、まったく別の人生もいいかな、なんて」
「今の人生はイヤなのか?」
「イヤってこともないけど、ほら、前にフユトに波乱万丈って言われたじゃん」
「ああ」
「もっと穏やかな人生もあったのかなあと思ってさ」
フユトが首を横に振る
「いや、お前は多分、どこにいても波乱万丈だよ」
「えーっ、そんなあ」
(つづく)
ナツキとフユト【23 君と最後に会った日】
ナツキがフユトに言った
「最後に会った日のこと、覚えてる?」
「卒業式か?」
「違うよ、その後で、街でバッタリ会ったじゃん。フユト、女連れだった」
「ああ、そんなこともあったな」
「かわいい彼女とは別れちゃったの?」
「あれは彼女じゃなくて従妹だよ」
「えっそうなの?」
「春休みにこっちに遊びに来てたんだ」
「なーんだ、そうだったのか」
(つづく)