ナツキとフユト【17 あなたがいたから】
ナツキがしみじみと言った
「フユトって優しいね」
「え?」
「早く出て行けって言われるかと思ったら、布団を買ってくれるなんてさ」
「だ、だって、行くとこないんだろ?」
「うん。あのときフユトに連絡してよかった」
「俺がダメだったらどうするつもりだったんだ?」
「わかんない。最初に頭に浮かんだのがフユトだったから」
「そうか…」
「フユトのおかげで路頭に迷わなくてすんだよ。ホントによかった…」
(つづく)
ナツキとフユト【16 相合傘】
フユトが、窓の外を見て言った
「降ってるぞ、出かけるのやめるか?」
ナツキが頬をふくらませる
「デパートのフードフェス、一緒に行くって約束したじゃん」
「でも、傘が一本しかない」
「相合傘で行けばいいじゃん」
「デパートに着くまでにビショビショになるだろ」
「じゃあ、途中のコンビニで傘を買うから、そこまで相合傘で行こう」
「ま、いいけど」
「やったー」
(つづく)
ナツキとフユト【15 落下】
「うわ!」
フユトはベッドから転げ落ちて、驚いて目覚めた
「…大丈夫?」
眠そうな声で言いながら、ナツキがベッドサイドの灯りを点ける
「やっぱり、大の大人が二人でシングルベッドに寝るのは無理だよ。しばらくここにいるなら、布団を一組買おう」
「ごめん…」
(つづく)
ナツキとフユト【14 未来】
「ナツキはこれからどうするつもりなんだ?」
「フユトのカフェを手伝いたい!」
「だから、それはまだ何年も先のことだって」
「じゃあ、とりあえずバイトを探して、何年か先にはフユトのカフェを手伝いたい」
「それ、本気で言ってるのか?」
ナツキが唇を尖らせる
「心外だなあ、本気に決まってるじゃない」
「そ、そうか」
(つづく)
ナツキとフユト【13 1年前】
「フユトは1年前の今頃、何してた?」
「今とほとんど変わらないよ。ナツキは?」
「いろいろあって、親とモメて、家にいられなくなってさ」
「それで?」
「いい感じになってた、今の恋人の家に転がり込んだんだ」
「お前って波乱万丈だな」
「そうなんだよー」
「そこ、うれしそうに言うところじゃないぞ」
「えへっ」
(つづく)