君と付き合えたら、そりゃあもう天国だよ
初めてのデートは、ド定番で王道のテーマパークもいいけど、僕の地元の自然公園なんてどうかな
植物園もあるし、小さな動物園があって、ウサギやモルモットと触れ合えるんだぜ
二人の仲が深まったら、一泊で温泉旅行なんてのもいいな
部屋の露天風呂に一緒に入って、二人で月を見上げたりして
君の頬はほんのりバラ色で、目と目が合ったら、お互いに照れてうつむいて
想像しただけでにやけちゃうよ
…でも、それはかなわない夢
知ってるよ、好きな人がいるって
しかもそれが、よりによってあいつだなんて
これって僕にとっては、地獄以外の何ものでもないって話
あーあ
乱視の気があるから、じっと月を見つめると二重に見えちゃうんだ
いや、別に涙で滲んでるわけじゃないよ
でも、こんな気持ちのときに、ひとりで月なんか眺めるもんじゃないな
君はどうしているんだろう
君も今、この月を見ているかな
えっ、まさかあいつと二人でとかはやめてよね
ホントに涙が出そうになる
わかってるよ
君が泣くことはない
僕と君は交わらない運命だったんだ
そう言って僕は笑って見せて、雨の交差点で別れたんだったね
あれからもう季節が変わったんだなあ
この前、君の噂を聞いたよ
あいつとうまくいってるみたいだね
君の思いが届いてよかったね
本当にそう思ってるんだ
だけど僕の心は、今もまだ雨の交差点に立ち止まったまま動けずにいる
もちろん、それを君に伝えるつもりはないけれど
今日のお題は「あの頃の不安だった私へ」だってさ
僕はパスだな
だって僕はまだ道の途中で、どっちに進めばいいのかもわかっていない
だからあの頃の自分を安心させてあげられる言葉なんて思いつかないよ
神様お月様お星様、どうかお願い
僕の行く道を少しだけ明るく照らしてください
そして立ちすくんだままなかなか歩き出せずにいる僕を笑わないでほしい
明日は燃えるゴミの日だし、バイトの面接があるし、その前にクリーニング屋にも行かなくちゃ
だから君のことを考えてる暇なんかないんだ
ほらもう早く寝なくちゃ
それなのに、目を閉じるたびに君の顔がちらついて、ちっとも眠けは訪れない
つんとすました横顔
大きな口を開けて友達と笑い合う君
それから…
あいつの前で頬を赤らめ、恥ずかしそうに目を伏せる君
ねえ、真っ直ぐに僕を見つめた意味はなんだったの?