子供のままで、
いつまでも、
世の中の滑らかさを、滑稽さを、カラクリを
知らないで、小さな世界だけで生きている、
そんな子供のままでいたい、と、かつては、大人になりたい、と思っていた、とある大人は思った。
そうして今、
それなりの時を過ぎ、それなりの時間の味を知り、
深く緩やかに、
世を面白がる目を持ち、
世を嘆く目も持ち、
諦めたり、
自分を恥じたり、時には愛でることも稀にあり、
しかし、
かつて思い描いた通りの大人ではない、
いつまでも子供のままでいるような、
子供はいつまでも続き、
ただ、大人という皮膚を纏うだけなのか、と、とある大人は知った。
彼はそんなふうに生きた。
愛を、叫ぶ
どこで
どんな
土の中から出たモグラは、考えた
もっと違う、こことは違う土を探しに行こう
もっとふかふかで暖かくて、違う香りのする土へ
潜り込んで眠るのもいいかもしれない
それから考えよう
月はそうっと微笑んだ
隣の小さな星が、ちらりと輝いた
モンシロチョウはモンシロチョウで
モンキチョウはモンキチョウで
アゲハチョウはアゲハチョウで
ただ、それだけ
チラチラと飛び交う、夏のあぜ道
振り返ったり、振り返られたり
いつしか
見つめ合えたらいいね
忘れられない、
いつまでも、
生きている間、
ちゃんと覚えていられる間、
その間だけ、
その間だけ、だけではないかも、
嫌な思い出も、
幸せな思い出も、
何も思わない思い出も、
きっと、
どこかで覚えている、かもしれない、
細胞が、昨日抜け落ちた髪の毛が、
覚えていた、かもしれない、
忘れたくて消えてしまったのかもしれない、
消えてしまうのがもったいなくて、
わざと消えてしまったのかもしれない、
いつまでも、は、ない、かもしれない、
あるのかも、しれない
覚えていない、あの日から
いつの間にか
世界を変えてしまった
長い長い人生の中で、知らないままでいても良かったかもしれない、この感情を
いつか懐かしく、羨ましくなる、この感情を
あなたは私に与えてしまった
初恋は今も、今でも、初恋のままなのです