約束
「「約束」」
日が沈む前の光と闇の
グラデーションが綺麗な空の下。
君は守るつもりなんて最初からなかったんでしょ?
…ごめん。
知ってたよ。
君が嘘をついていることだって。
…君が、もう長くは生きられない命だって。
長い付き合いなんだ。
君の嘘をつくときの癖くらいわかる。
君が残した手紙は、
最後まで僕を悲しませないものだった。
「嫌いだった」って。
「もう会いたくないから」って。
嘘ばっかり。
僕もそんなこと言えたら楽だったんだろうか、
なんて。
僕にとって君は心臓なんだ。
言えるはずもない。癒えるはずもない。
…ごめん。嘘ついて。
でも、自分が傷ついてでも、
君には悲しんでほしくなかった。だからさ、
届くはずのない2人の言葉。
風に乗って聞こえた気がした。
「君は約束を破ったからさ。」
『僕が約束を破っちゃったからさ。』
代わりに一つ約束しよう。今度はきっと叶えよう。
『「またね』」
ひらり
ひらり。
舞い落ちてくるのは桜の花びら。
見上げれば青い空と満開の桜。
その下にいたきみは、
何故だか白く儚く見えた。
ひらり。
舞い落ちてくるのは無機質なチラシ。
見上げれば灰色の空と灰色のビル。
その上にいた君は、
あの日と同じ白く儚い姿で--。
ひらり。
誰かしら?
白くて無機質な病室。
ノックの音が響く。
入ってきたのは知らない男の人。
この男の人、
「誰かしら?」
白くて無機質な病室。
指の震えを隠すようにノックをする。
中にいるのは愛する君。
君は言う。
「誰かしら?」
あなたは、
もし大切なあの人が
自分のことを忘れてしまったら
どうしますか?
私は悔いのないように
1日1日を大切にしようと思います。
芽吹きの時
…若葉が大地から芽を出した。
若草色の葉が、赤茶色の大地から顔を出す。
喜びと楽しみを養分に、広い青空に手を伸ばす。
…僕が君に手を伸ばした。
白くて日焼けもしていない肌が受け止める。
悲しみと苦しみを養分に、広い自由に手を伸ばす。
君がきっと手を引いてくれるから。
君が苦しい時に手を伸ばせるように、
僕は僕という名の逃げ道になろう。
あの日の温もり
「ほら、こっちにおいでよ!」
差し伸べられた小さな手。
僕は小さな手で握り返した。
あの日の君の笑顔。あの日の君の手の温もり。
忘れることはない。
「…大丈夫だよ。」
背中に乗せる大きな手。
不器用な僕だけど。決して立派ではない僕だけど。
僕も君のように。