「このセカイは」
このセカイに
一滴の光が落ちた
その色はセカイに波紋を呼び
セカイ中に広がった
セカイは真っ白に染まった
このセカイに
一滴の闇が落ちた
その色はセカイに影を落とした
セカイ中に混ざり合った
セカイは混沌とした
このセカイに
光と闇が生まれた
そして怒りと悲しみ
慈しみ愛しみ
もう何もなかったセカイを
知る者は誰も居なかった
それを思い出そうとする者も居なかった
このセカイに
ワレワレは生きている
様々なセイブツがイノチを育み
このセカイに
生かされ
朽ちていくだけのイノチ
このセカイは
きっと
何十光年経とうとも
どんな色を落とされても
このセカイは
そう
在り続ける
#5
「どうして」
どうして
君はここにいないの
掴み損ねた手を
今も探している
寒さに凍えていても
さみしい夜に泣きたくても
僕は歩き続ける
どうして
君は僕の横にいないの
抱きしめた体はなくとも
温もりがあればよかった
陽の陽射しを浴びて
溢れそうな涙を隠して
僕は駆け出した
君に…会いたい
#4
「ゆめをみてたい」
しんしんと雪が降る実家の庭を横目に
こたつに潜りんで横になる
真綿が入ったばぁちゃんが作ってくれた
半纏を着て
机の上にはみかんの皮がそのままに
微睡む意識の中
ストーブの上のやかんがシャンシャンと音を立てる
頬に擦り寄る獣の毛がくすぐったい
ゴロゴロとこちらも音を立ててきた
夕飯はけんちん汁だろうか
出汁の匂いが腹を空かせる
意識はあるのに瞼も開かず
指ひとつ動かせない
そんな自分に暖かい毛布がかけられる
ずっとずっとこんな優しさに包まれて
夢を見てたいんだ
#4
「ずっと…このまま」
ずっと…
続くと思っていた
朝食を一緒に摂って
休みは一緒に出掛けて
映画を一緒に見て
同じところで一緒に感動して
また見ようて
そんな日常
いつの間にか
忙しさにかまけて
今はもう目も合わせず
ただ挨拶を交わすだけ
ただ一緒にいるだけ
ただ一緒の部屋に帰るだけ
同じことができなくなって
使ったコップもシンクに置いたまま
そう、このまま…
終わりを告げる足音が聞こえる
#3
「寒さが…身に染みて」
つい数時間前まであいつはここにいた
「おはよう」
いつもの朝だった
「はよ顔洗えー」
いつもの日常だった
くだらない話をして、今日の予定の話をして
「出るのは何時?」
「あー9時には出たい」
「んっ」
いつも通りの会話だった
玄関で見送ったあいつはもう二度も戻らない
一緒に寝たベッドはまだ乱れたまま
あいつのぬくもりが残っていることを願い滑り込む
俺を迎えたのは冷たいシーツだけ
体がこの寒さに震える
戻らない温もり恋しさに
あいつのいない寂しさが…身に染みて
寒さが…残るこのベッドは
今夜から一人
#2