「無辜の怪物」
私はまさにそれだった
何も悪いことをしていない
ただ捨て子で、ちょっと頭が良かった
ただそれだけ
それなのにみんな、私のことを化け物だという
ひそひそと陰口を言い、足をかけて転ばせる
私が転べば彼らはげらげらと笑い、去っていく
そんなある日のことだった
「わっ、血が出てるよ!?大丈夫??」
私よりも泣きそうな顔をした君と出会ったのは
君は私の傷口を拭って、絆創膏を貼ってくれた
私と友達になってくれた
私のせいで標的にされても友達でいてくれた
それが、とても嬉しくて
だから、私は決めている
この命が燃え尽きるその日まで、私は君の友でいる
この命が燃え尽きて、生まれ変わっても
私はまた君の友になろうと
『命が燃え尽きるまで』
ずっと夜のままだった
辛くて、苦しくて、立ち直れなくて
私の心には、一向に陽光が差さなかった
「心だって、風邪をひく」
そう言われた時、やっと、夜が明けていくような気がした
『夜明け前』
友達がよく話す「好き」を理解できなかった
親も、友達も、私はみんな好きで
でも、その好きはみんなの言う「好き」とは
何かが違うらしくて
だから、あの日に
あなたに助けられたあの日に
心臓がありえないくらい大きな音を立てて
私が恋を知ったあの日に戻りたい
恋なのかな、勘違いかも、なんて悩んで
結局なにも出来なくて
すべて失ってから気が付いた
────あれは、紛れもなく本気の恋だった
『本気の恋』
今日も1枚、カレンダーをめくる
あなたと会えなくなってからどれくらいの月日が経ったのだろう
寂しいけれど、苦しいけれど
それでも、私は今日も笑って言うの
「私はまだ大丈夫」
────きっと、怒られちゃうな
『カレンダー』
────いない
どこを探しても
あなたがいない
わかっていたはずだった
わかっていたはずだったのに
私の胸は大きな穴が開いたように空虚で
嗚呼、どうしてか涙が止まらなかった
『喪失感』