音楽に出会った若者は
楽器を覚えて懸命に練習するだろう
いずれ上達して曲を作ることも出来るようになり
ラブソングを作るだろう
そのラブソングは恋人のことを歌詞にしたためて
音源に残したりするのだろう
その音源はいつしか黒歴史になるのだろう
(バンドマンあるある)
その奇妙な手紙を開くと、夜空のような色紙に銀色のインクで文字がびっしりと書かれていた。
日本語でもアルファベットでもないその不思議な文字は、まるで躍っているような形をしていて、ふわふわと浮き上がっているように見える。
いや、実際に浮き上がっている。
どうしたことだ、とあっけにとられているうちに、文字たちはふよふよと私の目の前を移動し、窓の隙間をするりとすり抜けて、夜空に舞い散った。
見上げれば、先程まで見えなかったたくさんの星が、鮮やかに空を彩っていた。
手元には夜空色の何も書かれていない便せんだけが残っている。
明日、銀色のインクを買ってこよう。そして誰かに送ったら、星空をプレゼント出来るのかもしれない。
すれ違う瞳
雑踏の中、見知った顔を見つけた。
最後に会ってからもう何年経っただろう?髪型は変わっているけれど、優しげな雰囲気はあの頃と変わらない。
声をかけてみようか?でも、向こうは僕のことなど覚えていないかもしれない。
逡巡しながら、ただその姿を目で追い続けた。
実は少しだけ、好きだったんだ。
2人で話をすることもなく、告げる機会もなかったけれど、なんとなくずっと良いなと思っていた。それだけの。
その時、彼女がふと顔を上げて目線が合った。
ドキリと心臓が跳ね上がる。
そんな僕をよそに、すぐに視線を外す彼女。すれ違う瞳。
ああ──話しかけなくて良かった。
全然知らない人だった。
青い青い山
蒼い蒼い空
碧い碧い海
sweet memories
なつかしい痛みだわ
ずっと前に忘れていた
でもあなたを見たとき
時間だけ後戻りしたの
(久しぶりに足がつって妊娠中を思い出した私)