ヒヨコだ。
テーブルの上ににヒヨコがいる。
どこから入ったのだろうか。
いつ入り込んだのだろう。
こういう場合、どこに報告すればいいのだろうか?
警察…気づいたらいた。信じてもらえない。
保健所…連れて行ってくれるかもしれないが、その後を考えると、スマホに手が伸びない。
私の思いも知らず、ヒヨコはテーブルの上をちょこちょこぴよぴよと走り回る。
じっと見ているのに気づいたヒヨコはこっちをじっと見ると、淹れたてのコーヒーのカップの裏に隠れた。
湯気の向こうから、声が聞こえる。
「そんなに見つめられると…照れる…ピヨ」
喋った!!!!!
「私は料理ができる!」
「僕は料理はできないけど、洗濯ができる!」
「私は洗濯ができないけど、掃除ができる!」
「僕は掃除ができないけど、家の中で働いているから、子供の送り迎えがしやすい!」
「お互い…」
「羨ましいよね」
「いいなあぁ〜…!」
仲が良いからと、やたらとくっつけたがるクラスメイト、大嫌いだった。
お前が私とくっつけられる噂が流れたら、どうするつもりだったのかと小一時間問い詰めたい。
どんなに気を遣ったって、相手に届かない。
こちらが何かを言えば「でも…」で不幸マウント取ってくる。
できるだけ聞き役に徹すれば「自分がないの?」。
それではと意見を言えば「あなたはすごいね…」。
挙句の果てには「あなたにめちゃくちゃにされた。もう◯ぬ!」……。
ああ、もう馬鹿みたい。
風が心地良い。
一歩先には道がなく、はるか下にはアスファルトを走る車の列。
ああ、ワクワクが体から溢れだしそうだ。
ここまで来るのに、たくさんのことがあった。
たくさんに我慢して、時に戦って、負けても進み続けた。
頑張ったよ。
嬉しいことも、楽しいことも、悲しいことも、嫌なことも、いろいろあった。
この手には、そんないろいろを書いた紙飛行機。
ここで今まで積み重なったいろいろを捨てて、また歩き出そう。
新しく歩きだす。新しい私を始めるんだ。
考えるだけで胸が高鳴る。
さあ、飛び立て!