「なぁ、なんでこの時計、修理に出さないのかい?針がずっと10時ぴったりで止まっているけど。」
僕の部屋に遊びに来ている友が部屋の真ん中にある大きな時計を見て指を指す。
「あぁ、その時計か。それは壊れていないよ。」
友人は訳が分からない、と言うように眉をひそめる。
「じゃあ、なんでこの時計は10時を指してるんだ?なにか意味があるのか?」
相当気になるのか、友人が早口で問いかける。
「……別に深い意味は無いさ。誰だってわけも分からずやりたくなることはあるだろ?」
友人は困惑の表情を浮かべた。そりゃそうなるだろう。僕も誰かがこんな事を言っていたらそんな顔になるはずだ。
「…まぁ、そうだな。」
と、無理やり納得したような声音で言われた。
何。その変わり者を見るような目は。
…だって仕方ないじゃないか。自分でも訳が分からないのだから。
「1000年先も」
夜眠れない時に、たまに考えることがある。100年先、1000年先の地球はどうなっているか。当然、僕はもうこの世に居ないだろう。それか、人類すら存在していないかもしれない。僕の今までの短い人生の間まででも、人類は発展しているのだから、その先の未来はどんなすごい技術があるのだろう。もしかしたらひみつ道具みたいなものも実現出来ているのかもしれない。でもきっと、いい事ばかりじゃない。自然は今もどんどん無くなっている。人の争いだってある。
……でも、本質は大体今と変わらないんじゃないかって毎回同じ答えにたどり着いて、いつの間にか眠ってしまっているんだ。
「閉ざされた日記」
明日から進学のために上京する、っていうことで部屋の隅の収納に押し込んでいたものを整理していたら、懐かしい物が出てきた。
――鍵付きの日記。
その日記は、白を基調としたシンプルなデザインで表紙に鍵穴が付いていた。この日記を私はひどく気に入っていたのか、今日買ってきたみたいに綺麗だった。
小学生にとって「鍵付き」というのはロマンに溢れていたんだろうな、と思えた。
…はて、中には何が秘められてるんだ…?
と思い日記を読もうと思ったが肝心の開ける鍵がない、ということに今更気づいた。
鍵はどこにあるんだっ!と頭をフル回転させたが皆目見当もつかない。幼い頃の私がする事だから、きっと思いもよらないような場所に隠したんだろうな、と自分に呆れつつも、もう一生開かないかもしれない目の前の日記にどこか切なさを感じた。
「夢を見てたい」
僕はあまり夢をみない。だけど夢ってものは、自分が覚えていないだけで毎日みてるものらしい。そういうことなら僕は、この夢だけは何故か覚えているって事になる。
…その夢には、僕の大好きな君がいて。そんなはずはないのに、僕に微笑みかける君がいる。
…目覚めたら何とも言えないやり場のない気持ちになる。忘れたいのに、忘れられない。こんな気持ちどこかに捨てられればいいのに。
でもまだ…夢を見ていたい。
「雪」
布団に入っていても感じる寒さのせいで、休みの日だというのに、早起きしてしまった。もう一度、2度寝しようとするけど、どうにも寝付けないので少し早いけど犬の散歩に行くことにした。ずっと一緒に暮らしている黒柴の小春。出会った頃は踏み潰してしまいそうなくらい小さかったのになと思いながら首輪とリードを付ける。今では小春はもうすっかりおばあちゃんだ。準備が終わってドアを開けると、見慣れない雪景色が広がっていた。だから朝寒かったのか。と納得がいった。
「小春、行くよ〜。」
玄関を開けても少しも動かない小春に声をかけるも、少しこちらを見ただけでまた固まってしまった。やっぱり寒いから行きたくないよねぇ…としみじみまだ寝惚けながら思っていると急に体が後ろに引っ張られた。振り向くと、小春がずんずん進んでいた。やっぱり柴犬はよく分からない…。家の前の路地を進んで、大通りに出る。まだ早朝だからなのか、ひとっこ1人居なかった。
「結構積もったなぁ…」
顔に触れる寒さに凍えながら思う。
いつもより寒い朝。さくさく、と音を鳴らしながら歩く雪道。いつもとは違う日常がそこにあった。
…たまにはこんな朝もいいかもしれない。