僕達は珍しいとされる一卵性での異性の双子。
顔立ちは瓜二つ、性格と能力は真逆。
幼少期から両親以外は見分けられる人は居らず、悪戯しては父上から怒られていた。
あの頃はいつも一緒で楽しかった。
それが叶わなくなったのは父上の急逝がきっかけだった。
僕は後継教育が始まり、妹と過ごせる時間は格段に減った。山積みの教科書に厳しい家庭教師。それらに囲まれ息が詰まりそうだった。
妹と今までと同じように過ごしたかった。
急逝した父上を恨んだ事もある。
それでも後継教育から逃れられず妹と会えない日々が続いた。
「ギルドに行くってどうして!?」
「私は父上の亡くなり方に裏があると思ってるの。それを調べたいからギルドに加入する。」
「そんなの騎士団に調査を依頼すればいいじゃないか!」
「……。その騎士団が1枚噛んでるとしたら?」
僕の反論に憮然とした態度で妹は告げた。
妹が言っている事がもし仮に事実なら父上は味方に裏切られて落命したことになる。
そう考えるだけで血の気が引いた。
単純な事実にさえ気づかなかった僕に妹は失望したようで何も言わず去っていった。
それが今から約10年前の出来事。
久しぶりに見かけた妹はまるで別人だった。生き生きとし明朗快活に笑う姿に距離を感じた。
今や家や立場に縛られ身動き一つ取れなくなった
僕をみたら君はなにを思うだろう。
君のように自由に生きられたらと
そう願うのは傲慢だろうか
遠い異国に居る両親は元気だろうか。
語学留学の為に母の故郷にやってきて1年間経った。
初めて会う叔母や従兄、日本で仲良くなった友人達。
そしてこの世を去った恋人。
多くの人たちの出会いが現在の幸福に続いている。
それでもほんの少しさみしい。
彼が隣にいたらとふと考えてしまう。
「会いたいな……」
涙が頬を伝い
本音がポロリと口からこぼれた。
天国にいるあなたは元気ですか?
私は元気にやってます。
ただ少しだけあなたを思い泣いてしまう事を許してください。
大きくなったらお嫁さんになってね
海外に引っ越した幼馴染に言われた約束
何故か不意に思い出した
何かが起きるそんな予感がした
鄙びた公園
幼馴染と遊んだその場所は遊具は老朽化により撤去され
子どもはよりつかない
懐かしさより寂しい場所、そんな印象だ
街は過疎化が進み若者は都会にでたまま戻らない
田舎に等しい故郷
私も高校を卒業したらそうなるだろう
この街にはいい思い出はあまりないから
「君はあの頃から変わらないね」
「……え?」
背後から声をかけられ振り返る
長身で切れ長の瞳の男性は洗練された美しさをもっていた
あの子が成長したらこんな感じだろうかと
記憶の中の幼馴染を重ねてみてみる
「まだ気付かないの?僕だよ。」
一瞬頭の中がフリーズ
ダメ押しの問いかけで理解した
可愛くて泣き虫だった幼馴染がこんなイケメンになって
現れるなんて心臓に悪すぎる
真新しい地図には行ったことのない
知らない地名がいくつもある。
無数の選択肢のなかから自分で選択できるって
ものすごく幸せなことじゃないだろうか。
その地の風土を歴史を食文化を知る。
それだけで私の中の世界は広がっていく。
様々な知識が蓄積されていく。
そうして得た経験と知識が
また一つ糧となり成長する為の礎となる。
そんな経験をこれからもしていきたい。
次はどこに行こう。
「君のことが好きだよ。」
不意打ちの告白に周りの音がなくなった。
じわじわと頬が熱くなり鼓動が速まっていく。
思いを寄せている人に告白されるなんて夢じゃない?
「あの、聞いている?」
「ひゃ…ひゃい!聞いてます!」
どうしよう。舌を噛んだ。
恥ずかしくて俯くと頭上から吹き出す声がする。
今すぐ逃げ出したい。
逃げるために後退ろうとして腕を引っ張られ抱き寄せられる。
「本当に可愛い。ねぇ、返事聞きたいな?」
まるで媚薬のように甘い声で囁かれる。
心臓が今にもはち切れそう。
YESの答え以外、言えそうにない。