「昨日と違う私」
土砂降りの雨の中、窓を閉め切って
僕らはそっとカッターを握りました。
日に日に暗く、重くまとわりつく闇に
もう飽きてしまったのです。
黒以外の色が見たくて僕らは赤を滴り落とすのです。
そのすぐ上で、雲の世界から舞い降りた天使らは
屋根の上に集い、そっと手を合わせ、
雨を顔に受けながらゆっくりと目をつぶりました。
I believe in your happy life.
天使らは僕らが赤を求めていることにも気が付かず、
ただ純粋にこれだけを思い続けるのです。
そんなことも知らずに、
土砂降りの雨の中、窓を閉め切って
僕らはそっとカッターを握りました。
【#144】
「まって」
手を満点の星々に重ねた。
こんな風に、独りで涙流してたとき、
そっとこの手を握ってくれたあの人。
初めて人と一緒にご飯を食べて、
初めて人と一緒にお風呂に入った。
殴られずに人と過ごせることは、
こんなにも幸せなのかと感動した。
何処へいても、何をしてても、
この伸ばした手を必ず見つけ、握ってくれた。
僕はそんな人に恩返し一つ出来ずに、
輝く星になった貴方を見上げるしかない。
ねぇ、この手を握り返してよ、あのときのように。
【#143】
「手放す勇気」
大好きな、大好きだった、貴方との記憶の欠片。
写真、動画、思い出。
まだ写真立てだって指輪だって捨ててないわ。
貴方は捨てたのでしょうね、私との記憶を。
私があまりにも汚すぎて、嫌になったんでしょう。
さよならって言われた時、
私がどれだけ泣いたと思ってるの。
まだ私がこんな事してるって知っても、
失望しないで。
私が、貴方を愛していた証拠よ。
【#142】
「光り輝け、暗闇で」
自分が自分では無くなった感覚だった。
体が動かすのが怖くて、息もしたくない。
この感覚に飲まれ、沈み、
私は無くなってしまうのだろうか。
【#141】
「酸素」
駅で、虐められているのを見た。
高校生くらい眼鏡の人が、
階段から落とされそうになって、動画も撮られて。
…笑ってたんだよ、加害者の三人とも。
相手が怒ってるの見て、笑いながら逃げたんだよ。
全身にずーんって来た。
ショックでしかなかった。
この世界に、本当にこんな人がいるんだって。
あのとき、
逃げる前にあいつらの腕を掴めていたら。
そんな後悔が、何かある度に頭で囁くの。
[お前の判断で、人一人傷つかずに済んだのにな。]
深呼吸をした。心を落ち着かせようと。
酸素が身体中に回った。それが、苦しかった。
【#140】