【向い合わせ 】
今はあまり見かけなくなったボックス席の車両。
知らない他人と近距離で向い合わせなんてシチュエーション、なかなかない。
空いている時間だと、1ボックスを一人占め。
まるで動く小部屋みたいでリラックスできた。
遠足の時はとても楽しかった。
お菓子を食べたりおしゃべりしたり。
新幹線の椅子は回転できるけれど、コロナの今、それも出来なくなってしまった。
給食も今は皆前を向いて食べているらしい。
やっぱり給食は向い合わせで食べたいよね。
【私の日記帳】
子供の頃、私の日記帳はいつも同じ書き出しだった。
今日は○○をしました。
とても楽しかったです。
みたいな…
ただの記録だった。
大人になってからは、嫌なことがあった時だけ書いていたような気がする。
だから読み返すことはない。
嫌な気持ちを思い出したくないからだ。
いつか処分してしまおうと思っている。
もしも私が死んだ時、誰かに見られるなんて絶対嫌だ。
そうだ、明日にでも処分しよう。
そして、これからは嬉しいことがあった時に日記を書く事にしよう。
やるせない気持ち
娘は海外で暮らしている、以前付き合っていた相手は中国系アメリカ人だった。
プロポーズまで受けて、我が家にも連れてきたが、その後、結婚せずに別れてしまった。
やはり国際結婚は難しいと思った。
それから4年近く経っているが、彼氏の話も結婚の話も全く聞かなかった。
結婚はしたくない。したいと思ったらするけれど、無理にするつもりはないと言う。
そういう話になると、こじれて最後は喧嘩のようになってしまうので、話をすることさえほとんどなかった。
そんな娘が、コロナでずっと帰国できなかったが、3年ぶりに一時帰国してきた。
こちらからは何も聞かなかったが、ふとしたきっかけで泣きながら心の内を吐露した。
どんなに親しい友達にも、本当の心のなかを話したことはない。言ってもわかってもらえるはずもない。
3年前から付き合っている人がいる。
それだけだった。
それ以上は聞かなかった。
しばらくして、ポツリポツリと話をした。
付き合っている人は離婚歴があること、一回り以上歳が離れていること。
お父さんには言わないでと言う。
多分、それだけではない気がした。
人種的な事もあるのかもしれないという気がした。
それについてはこちらからは何も言わなかった。
いいんだよ。もしも家族に反対されたとしても、思うように生きなさい。親はいつまでもいるわけじゃあない。自分にとって本当に大切でお互いが必要としているのなら、親よりその相手をとりなさい。
そう言いたかったが、もう少し様子を見ようと思った。夫は何も知らないが、夫に言ったら多分面倒な事になる。
娘の気持ちを思うとやるせない気持ちになった。
海へ
私が住んでいる場所には海がない。
海は特別な場所だ。
世界に繋がっている場所。
昔から海が見えると「海だ。海が見えたよ」
と騒いでしまう。
でも、生まれてから今まで、海水浴に行ったのは3回しかない。
子供の頃に1回、若い頃に2回。
結婚してからは一度もない。
なので、我が家の子供達は家族と海水浴に行ったことはない。潮干狩りが一回だけ。
海を見るのは好きなのだが、入るのは好きではないのだ。
日焼けで酷い目に遭ったし、水着に砂が入ってジャリジャリするし、海水はベタベタする。
そして、海岸は人だらけで、波で遊んでいるうちに自分の場所がわからなくなる。
だから、私は夏以外の海が好き。
静かな海岸を歩いたり、波の音を聴いたり、水平線に日が沈むのを見たり。
夏が終わったら海へ行ってみよう。
裏返し
義母は、洗濯物を干すとき、いつも裏返しに干していた。
私はきちんと表にしてボタンやファスナーもキチンとしめないと気持ちが悪い。
なぜ裏返しにするのか考えてみた。
脱いだとき裏返しになるので、戻すのが面倒くさいから?
紫外線で退色するのを防ぐため?
義母に聞いてみると、中に虫が入っていると着た時に刺されてしまうので、畳む時にひっくり返せば気が付くということらしい。
でも、冷静に考えてみれば、手をいれた時点で刺される気がするのだけれど。
そして、夫は若い頃なぜか、トレーナーとか短パンとかを裏返しに着ていた。
なぜそんな風に着ていたのか聞いてみると、長持ちするからだそうだ。
これも理解できない。
長持ちするとしても、格好悪い。
それに子供の頃、裏返しに着ると死んだ人になっちゃうよと母に注意された。
おっちょこちょいな私は、ウッカリ裏返しを良くやって、恥ずかしい思いをしている。
家族それぞれの裏返し事情。
鳥のように
一時期、毎晩のように空を飛ぶ夢をみていた。
なぜ、そのような夢を見たのかはわからないが、嫌な夢ではなかった。
空を飛んでいるとき、姿は人間のままなのだけれど、動きは鳥のように自在に飛び回ることが出来た。
急降下したり、身体を傾けて旋回したり、腕をパタパタと動かして立ったまま上昇したり。
行きたい場所にどこにでも行けた。
自由でとても気持ちのいい夢だったが、ある時パッタリと見なくなってしまった。
あれは一体なんだったのだろう?