青い空。キリッとするような冷たい風。マフラーの下からでる白い吐息。曇るメガネとうるさい馬鹿。そんな、いつもと変わらない冬。うるさい馬鹿は幼なじみで家が近い奴のこと。登下校はいつも一緒だ。ある日、雪が降っていた。私は推しのCMであるメルティキッスの歌を口ずさむ
「ふーゆのきーっすはぁ」
「ハァイッ!」
合いの手を入れられる。うるさいなぁもう!
「ゆきぃのよーおなくちーどけー」
「降る雪がぜぇーんぶー?!」
また合いの手。煽ってんのかこのやろー!
「メルティキッスなら」
「「いいのにねぇー」」
さぁ、最後はどう来る?!
「め、い、じ」
「メルティ?!」
そう来るか
「「キッス!!!」」
そう笑う私たちは後日クラスで笑われた。
「お前が今、ここにいるから俺らの物語は語り継がれるんだよ!ずっとずっーと、永遠に!」
そうやって笑う彼は俺にとっての太陽で。
その彼の笑顔で周りが笑い、空気が柔らかくなる。彼を嫌う人なんてひとりもいなくて、人生で初めて永遠に幸せであって欲しいと思った奴だった。
……なのに。それなのに。彼は呆気なく俺を置いていった。彼が太陽なら俺は月だった。太陽の彼に照らされて、彼がいるから輝いて見えるだけ。彼がいなければ他と変わらない単なる石ころで、俺自体に何か秀でたものがあった訳では無い。だから彼がいた頃の俺らの物語だけは100年先も永遠に語り継がれた。
ブランコは嫌いだ。いつもゆらゆら揺れている。
人に漕がれてゆらゆらゆらゆら揺れているブランコは自分を移されているようで、見透かされているようで。どうしようもない劣等感に包まれる。
ブランコは、嫌いだ。
まるで俺のように揺れるから。人に流されて思いのままに動かされるから。
必要なくなってしまえば、飽きてしまえばすぐにどこかへ行かれてしまうから。
辛いこともあって、楽しいこともあって。苦しいことも悲しいことも幸せだと思う瞬間もいくつもいくつもあった。旅路は人生だ。長い長い旅。その旅路の先には何があるんだろう。
「I love me!」
そんな声が聞こえた。どうせいつものおふざけな男子。彼はいっつもうるさいし幼稚園児みたいなことしか発言しない。
…ただ、ちょっぴり
「かっこいいなぁ……」
なんて、ね。
自分のことを好きと思えて、それを言葉にできる彼はきっとかっこいいんだろうなぁと思う。
私も、いつか
「I love you」
って言いたいな。