最悪の想定ができるということは
可能性があるということ
つまり、
その可能性がある限り
起こりうるということだね
カレーうどんを想像してみて?
君は今日白いTシャツを来てきたから食堂のカレーうどんを頼むのをやめた
でも、今日はカレーうどんが定食に入っていたから
結局他の人が食べてた汁が背中にとんでるよ
想定できる最悪の状況ってのは
少ないパーセンテージであっても
起こりうるのさ
スマホを修理に出しにショップに行った
店員さんに
電話番号はわかりますか?
と聞かれ、
「えーつと……夫のスマホなんです」
と答えた
怪しかっただろうか
訝しんだ顔をした店長さんに
「今朝旅行に行く夫のスマホが故障したので
私のを貸して代わりに修理にきたんです」
SIMカードを入れ替えるだけで
本体はそのまま使えるし
幸い同じメーカーのものを使っていたので
旅行先で友達と連絡が取れないと
困るだろうと貸したのだ
本体に写真やアドレス、メールなどが残るため
店員さんに
「ご夫婦で、秘密とかないんですか」
とたいそう驚かれた
そうか
そういえば特に秘密とか
考えもしなかったな
まあ少なくとも
誰にも言えない秘密は
スマホには残さないものだが
狭い部屋が好きだ
昔から視界に入らない部分が怖かった
空間や闇には何かが潜んでいると思ってしまう
だからシャワーで目を瞑るのも
最短にしている
一人暮らしをする時に選んだのは
ワンルームの狭い部屋
これで使わない部屋はない
ほっとした瞬間
カタリとユニットバスから音がした
失恋したくて恋をした
だって先輩が
私の書く歌詞にはリアリティがない
失恋したら、いい詞が書けるって言うから……
誤算だった
どうして、
こんなに辛いものだって
先に教えておいてくれなかったの
うちのじいちゃんは偉い人だった
偉い人だから多分大人の嘘を沢山吐いてきたと思うけど
子どもや孫には
「正直に生きろ」とよく怒った
80歳をこえて体を壊し検査をした
病院からは
胃潰瘍と診断された
じいちゃんにそれを伝えたら
「あのな?正直に生きなさいと教えただろう?
ちゃんと言いなさい」
「……本当は、
癌なんだろう?」
沈痛な面持ちに
言いにくかったが
「本当に
胃潰瘍だよ」
と医師の診断書を見せた
じいちゃんはしばらく食い下がったが
やがて納得した
そして90歳まで元気に生きた
私はそういう
人生に一度くらい遭遇する
真面目なシーンで
ボケをカマしてくるじいちゃんが本当に好きだった
これからも正直に生きてくよ
じいちゃん