声を押し殺して泣く
誰も気づかない場所で
大丈夫
涙くらい拭ける
弱音くらい飲み込める
どんな感情も暗く塗りつぶしてしまえばいい
だけどほんの少しだけ本音を言えるなら
私を見つけて
“暗がりの中で”
跳ねるように揺れて
舞うように色づく
ゆらめきながら注がれ
芳醇な湯気が全てを満たす
味わわずして虜となる
“紅茶の香り”
花には花言葉
人間には愛言葉
私の愛言葉はなんだろう
紫陽花と同じだと素敵だな
冷たさも悲しさも
裏切りも涙も
純白のベールのように纏って咲いていたい
“愛言葉”
大声で笑い合った理由も思い出せないけれど
死ぬまで宝箱にしまっておくの
“友達”
夕飯は何にしようかなとスマホを触りながら考える。明日は土曜日だ。一日中ダラダラしたい。
「よし。カレーにしよう。」
誰もいない部屋で、まるで自分に言い聞かせるように呟く。そうしないとなかなか動けない。材料があることを確認し、ジャガイモと玉ねぎの皮を剥き始める。
無心で準備をしていると、頭の片隅でずいぶん前に付き合っていた男性のことを思い出した。あの人はカレーが大好きだった。
「野菜は、大きめに切ると美味いんだ。特に人参は大きく、目立つように切ると見栄えがする。」
自分のカレーに対するこだわりを得意気に話していた。
私はあの自信満々で、少し子どもっぽい笑顔のあの人が大好きだった。どうして別れることになったのだろうか。そんな事を考えながらルーを入れて良い香りがしてきた鍋をかき混ぜる。
「いただきます」
炊きたてのご飯にできたてのカレーは相性抜群だ。見た目もなんとも食欲をそそる。
そこでふと思い出す。私の作るカレーには人参は入っていない。野菜は玉ねぎとジャガイモだけ。
そうだった。人参は嫌いだとあの人には言えなかったのだ。そんな簡単なことも伝えられなかった。
「そばにいて欲しい。行かないで。」
そんな難しすぎる本音、言えるはずがなかった。
“行かないで”