パッと傘が咲く。
ぼんやり水気を帯びた闇を
乾いたビニールが切り裂く
上空に綺麗な色を探すけど
空との間に分厚い水のかたまりがあって
めがねをかけてないときみたいに
ピントが合わない
ああもういいや
まとわりつく靴下と
重たいリュックを脱ぎ捨てると
傘の取っ手に力いっぱい掴まりながら
どうか助けてくださいと
どこかでともる灯りに祈る
途端に
傘が、雨を弾きながら上へ上へと昇っていく
遠ざかる地面を尻目にぼんやりしているうちに
雲を抜けて
傘が奏でる音が止んだ
「流れ星に願いを」
とっておきの仮面を見つけた
大きな赤色の口は
両端が持ち上がっていて
目元のデフォルメされた雫や星は
おもちゃ箱みたいで
かわいらしい
大丈夫だってなあこっちからやってくれよお前ならいけるっしょ
大きな口は両端が上向きなまま
YESと動く
みんな笑顔になる
ほらねなんだかいい感じ
雨降りで輪郭が解けた雫と星
滲んでぐちゃぐちゃになった鮮やかな赤
大丈夫だってこっちからやってくれよお前ならいけるっしょ
ぐちゃぐちゃの赤は両端が上向きなまま
YESと動く
みんな笑顔になる
ほらねやっぱりいいかんじ
「大切なもの」
誰よりも誰よりも誰よりも…
そんなことばかり考えていたら
ある日突然感情の線が凍結して感情が心まで
届かなくなった。
何かをするのにはエネルギーを使うけれど、
何もしないのにもエネルギーを使うのだ
そんなことを身にしみて感じる日々
深夜、ラジオから流れる桜の花びらに気がついた時
雪解けの証が瞳から零れた
「誰よりも」
おはようって景気よく言えた朝には黄色
ひとり怯える夜には青色
推しの先生と話せたときには桃色
いつしか心の中にできたいろとりどりの花畑
いつかうつむいたあの子に
それらの花を束ねて贈れるといい
私のヒーローがそうしてくれたように
「花束」
伝えたいことがたくさんあるのに
なにひとつとして言葉にできない
そんな僕だけど
精一杯紡ぐから
拙くても馬鹿げてても
照れずに
聴いてほしい
「溢れる気持ち」