はるな「ねぇ、『人魚姫』のお話知ってる?」
みき「あー、マジ泣けるよね。海の泡になっちゃうとか悲しすぎる」
はるな「だよねー、王子が他の人と結婚したからってねえ」
みき「そうだよー、その後いい事いっぱいあるかもしれんし」
はるな「わかる。将来何があるかわかんないじゃん」
さや「あと声が出せないのヤバくない?何にも話せないんだよ」
みき「私、声が出なくなったらちょー悲しい。こうやってみんなと話せないんだよ」
はるな「全部LINEかインスタで会話する?」
さや「それいいじゃん、おもしろそう」
みき「話せなくても友だちでいてよ〜」
はるな「何言ってんの?あまりまえじゃん」
みき「そもそも王子の船が遭難するのヤバいよね」
はるな「マジそれ」
ゆめの「じゃあさ、もう遭難とか全部なしで『人魚姫は海の中で楽しく暮らしました』でよくね?」
はるな「それな!天才じゃん」
ひだまり幼稚園は今日も平和に過ぎていくのです。
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お題:終わらせないで
一番大事で一番難しいのは自分を愛してあげる事。
自分を愛してあげられない人は他の人も愛せないから。
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お題:愛情
朝起きるとなんとなく気だるい気がした。すっきりしない目覚め。そういえば、昨日の夕方から喉に違和感があったような気がする。まあ、ベッドから起き上がろう。
いつも通り、やかんを火にかけお湯を沸かす。その間にカーテンを開けて、洗濯機を回し始める。目覚めのコーヒーを淹れたが、飲む気がしない。朝食の準備をしようとしたが、食欲がわかない。体温計を取り出し、熱を測ってみる。37.6℃。少し高めだが、病院に行くほどではない。
ソファに座って今日の予定を考える。特に予定はない。そうだ、ベッドに戻って寝よう。
昭子はベッドに戻ってこれまでの自分の生活を振り返った。これくらいの体調なら、いつも通り過ごしていた。家族のお弁当やご飯を作り、掃除をして洗濯をして。体調が悪いからといって休む事なんてなかった。外に働きに行かない分、家の事は全てやらなくてはならないという責任感があった。家族から何か言われるわけではないが自分で自分を縛りつけていた。ひとりになってこれまでどれほど自分に厳しかったかと言う事を思い知らせる。
窓から入る朝の光を感じながらうつらうつらとする。
ふと目を覚ます。小一時間ほど眠っていたようだ。まだぼーっとする。子どもの頃の思い出が蘇る。熱を出した時、すりおろしのりんごを食べさせてもらった。布団の中で母の家事をする音を聞いていた。たまに部屋を覗く母。兄弟たちが学校に行っている間、母は私だけの母になる。それが嬉しくて熱が下がっても何日か学校を休んだものだ。母の家事を休んでいる姿も思い出せない。母も体調が悪くなることがあったのだろうか。私が覚えていないだけだろうか。
またうとうとと眠りの世界を漂う。
お昼を過ぎた頃、すっきりとした目覚めがきた。
冷蔵庫にりんごが入っていたはずだ。昭子は自分のためにりんごをすりおろした。ひとりになったのだ。病気になっても自分で自分を看病しなくてはならない。しっかりとしなければと思いながらすりおろしたりんごをゆっくり食べた。
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お題:微熱
朝起きてカーテンをあける。目の前の水平線に太陽が顔を出す。雲ひとつない晴天だ。これからどうしよう。今日はなんでもできる。
まずは愛犬のカイトを連れて朝のビーチを散歩する。カイトは黒のラブラドールレトリーバー。砂浜に腰を下ろす老夫婦。沖に出てサーフィンをする若者。砂浜を駆け回る子どもたち。手を挙げて挨拶を交わす。
少し空腹を感じてきた。気づけば太陽はずいぶんと高い位置に移動している。朝食と昼食を兼ねた食事を摂る。今日はガレットが食べたい気分だ。馴染みのカフェによる。ここはとても静かで居心地がいい。風が心地よいテラス席でガレットとフレッシュジュースを頼む。カイトの食事も用意してもらった。
食事を済ませて家に戻る。庭の木陰にハンモックをセットする。ドリンクと本を用意して、私の特等席の出来上がり。ゆらゆらゆられながら、本に没頭する。
本を読み終わると、身体が汗でじっとりとしていることにきがつく。水着に着替え目の前のプールに飛び込んだ。太陽の光がキラキラと水面に反射する。全身の力を抜いて水面にぷかぷか浮かぶ。太陽が眩しい。プールに飛び込んだ私を見てカイトもダイブしてくる。ふたりでひとしきり遊んでプールサイドでひと休み。何度か繰り返しているとだんだん影が伸びてくる。
シャワーを浴びてワンピースに着替える。ベランダの椅子に座りゆっくりと沈む太陽を眺める。
太陽と過ごす一日。
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お題:太陽の下で
寒くなってきたので、お母さんが冬物の服を出してくれた。コートや手袋、あったかい靴下。
一番のお気に入りはおばあちゃんが編んでくれた真っ白なニットのワンピース。
これを着ていると雪の妖精になれる。雪が降る日でも私を暖かく包み込んでくれる。このワンピースを着られるから、冬が楽しみ。
早速着てみる。なんだか袖が短い。去年までのふわっとした感じがなくなっている。
「背が高くなったからね、今年はもう着られないかな」とお母さんは言う。
まだ着たいよ。このワンピースがあるから、寒い冬も楽しく過ごせるのに。
私はおばあちゃんに相談することにした。私のおばあちゃんは魔法使い。おばあちゃんの作った服を着ると私は何にでもなれる。春は蝶に、夏はひまわりに、秋は森の妖精になった。
ワンピースを持っておばあちゃんの家に行く。
「任せておきなさい」とおばあちゃん。
おばあちゃんの手は魔法の手。まずはワンピースの先をつまむ。するするするっと毛糸が解けていく。ワンピースだった毛糸はうねうねと波打っている。それをアイロンのような形をした機械にセットする。するとうねうねの毛糸は真っ直ぐな毛糸に早変わり。それを玉巻き機にセットする。玉巻き機をくるくる回すと綺麗な毛糸玉ができていく。するするする、くるくるくる、するするする、くるくるくる。おばあちゃんの魔法の手で5つの毛糸玉が出来上がった。
「さあ、今日はここまで。続きはおばあちゃんがやっておくよ」
数日後、おばあちゃんから家にいらっしゃいとお誘いがあった。おばあちゃんが出してくれたのは、雪のような真っ白なセーター。アラン模様のセーター。着てみるとフワリと暖かい。ワンピースの時より暖かさが増したようだ。
素敵。これで雪の日も暖かく過ごせる。
「おばあちゃん、ありがとう」
そう言う私にもう一つと言って、同じ毛糸の帽子を取り出した。てっぺんに大きなポンポンのついた真っ白な牧師。ポンポンがうさぎのしっぽみたい。
「おばあちゃん、ありがとう。さようなら」
私はうさぎの妖精になって家路を急ぐ。
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お題:セーター