「通り雨」
「別世界ってあるんだな」と窓をつたう雨の跡を見ながら茉莉は思った。
窓の外は雨に濡れた白い小石がしきつめられ、その奥には新緑の木々がしっとりと佇んでいる。
室内はゆったりとした空間に高い天井からは柔らかい燈がそそいでくる。
部屋の中には他にも何人も人がいるのにとても静か。それでいて緊張感があるわけではない。穏やかで満ち足りた空間。
ここに辿り着いたのはただの偶然。
久しぶりに予定のない休日で、お昼過ぎまでベッドでゴロゴロしていた。暇つぶしがてらに買い物に出かけたところ、急に雨が降り出した。
疲れていたしどこかで休憩しようと思ったが、ファーストフード店もカフェも休めそうな所はどこも満席だった。
少し歩いたところにホテルのラウンジがある事を思い出した。
躊躇しながら足を踏み入れて驚いた。優雅な空間、時間の流れ。
メニューを見て公開した。コーヒー一杯で1日の食事が賄える。いつも飲んでいるコーヒーなら10杯は飲める値段だ。
コーヒーに口をつけ、他のお客さんの様子を眺める。
本を読む人、PCを操作している人、おしゃべりしている人。
誰もが落ち着いて、その場に溶け込んでいる。
「そうだ」茉莉は思った。
「この場に溶けめる人になろう」
これまで夢や目標なんてなかったけれど、急に目の前が開けた気がした。
そして、怠惰な午前中の生活や乱雑に散らかった部屋を思い返した。普段の仕事に対する態度や選ぶ物を思い返した。
ラウンジを出ると雨はすっかりあがっていた。
茉莉は背筋を伸ばし、大きく一歩を踏み出した。
「秋」
澄んだ高い空に浮かぶうろこ雲
楽しかった夏を思い出す
サクサクと落ち葉を踏む楽しい足音
嬉しくてひとり外に駆け出した
いそいそと冬支度をはじめる動物たち
豊かな実りに感謝する
身が引き締まるような空気
これから始まる新しい季節に期待する
私が1番好きな季節
あなたが産まれた季節
「窓から見えるもの」
家のカーテンを開けるのは、1番早く起きる私。
カーテンを開いて外を見る。
いい天気!
雲が多いな〜。
雨か。
そして別の窓から天気予報を見る。
「形のないもの」
◼︎氷→水→空気
氷に形はあるのかな。氷の形は容器の形。
風船は空気が入ったら、風船?
穴が空いて空気が抜けた空気抜けた風船は風船ではないのだろうか。
◼︎魚→食料→栄養
海で泳いでいた魚。昨日、私に食べられた。
私に食べられたら、魚は私になるのだろうか。
◼︎思考→記述→文章
まとまらないこの考えも形になる
◼︎思想→行動→人
私は誰?
「ジャングルジム」
ジャングルジムの1番上に立ち
空を手にしたあなたを
ただ眺めていた
眼下に広がる世界を眺め
雲ひとつない青空を抱いて
あなたは何を考えたのだろう
見上げるあなたははただ眩しかった