hot eyes

Open App
4/5/2024, 2:23:38 AM

私は人より意思が弱い。それは自分でもわかってる。あぁ、意思が弱いっていうのは発することが出来ないんじゃなくて、元々頭で考えて無いってこと。
皆には明確に有るものが私には作り出せないって、ただそれだけ。

「____と、葉瀬(ようせ)ちゃんはどっちがいい?」
「あっち」
「えぇ?お母さんはこっちの方がいいと思うんだけどなぁ。でも決めるのは葉瀬ちゃんだからねぇ......本当にあっち?」
「......どっちでもいい」
「じゃあ...こっちにするね。いい?」
「うん、いいよ。それで」

いつもこんな感じだよ。お母さんは私が選ぶと大体嫌な顔をするから、最終的に任せてる。
本当どうでもいいから、どうでもいいから適当なんだ。

修学旅行の行き先だって、私が行きたかった所は1つも入ってなかった。それも特に気にしなかった。何か言うと後で面倒だし。
だから修学旅行の思い入れなんて特に無い。

それからも、なんとなくそれでいいで生きて来られた。

誰にも言ってなかったし、ずっと気にしてなかった。


けど。


「え、これ確か葉瀬苦手じゃなかった?」


って言われた。

「え?」
「そうなの?葉瀬ちゃん言ってくれれば良かったのに」
「そうだよ。無理する必要ないし」
「...い、やいや!別にそんなでもないし、チャレンジ~ぐらいだよ!それに皆これ食べたいでしょ?それでいいから。私は大丈夫だよ」

昔、お母さんに『葉瀬は好き嫌いが多いから、多少嫌いでもそのお店に行くんだよ。じゃないとその友達に迷惑かけるよ』と言われていた。だから弁解したのだが。


「折角なら皆が食べたいもの食べたいじゃん。無理しないでよ」


と断ち切られてしまった。
「え、えー...」
「葉瀬は食べたいものとかないの?なんでもいいんだよ」
「いや特に...皆が好きなもの食べよ、私もそれでいいよ」
「......俺は」
「?」

「俺は、葉瀬の『それがいい』って言葉が聞きたいな」

なんか少し悲しそうなのは、私が何も言わないから?
(そんなこと言われたってなぁ...)
「...た、拓也(たくや)これって...!!」
「うん......玲人...やっぱりだったよね...!?」
拓也と秋(あき)は顔を見合わせて何やら確かめあっている。なんか盛り上がってるけど何の話だろう。
「玲人もやっとか~」
「ちょ、違うから!2人共!!」
なんか玲人も混じってる。
これは私が言わなきゃ終わらないやつなのかな。
(確かに食べたいものはあるけど、言っていいのかなぁ...)
ちら、と確かめるように玲人を見るとこちらに気づいたのか自信満々に笑ってみせた。

「......うーん、じゃあ......これ、かな」

そうやって指を指すと、玲人は何故か嬉しそうに笑った。
「じゃあここにしよう!2人もいいよね?」
「しょうがないな~玲人は」
「は?なんで俺?」
「そうだね、これはほぼ玲人のお願いだね」
「ちょ、も、そういうのいいから!」
なんだかよく分からないけど、私が指差した店で良かったらしい。

「じゃあ行こうよ」

なんで玲人が私よりも嬉しそうなのか、この時はよく分かってなかった。


お題 「それでいい」
出演 葉瀬 玲人 拓也 秋

4/1/2024, 5:14:11 PM

今日はエイプリルフール、ということで。

「玲人(れいと)実は私、今まで彼氏50人くらいいたことあるんだ~」

玲人に嘘をついてみたのだ。

私に関して、玲人の驚いた顔はあんまり見たことがない。だからちょっとだけ、ちょっとだけ気になったのだ。
「...ふーん」
「学生時代、モテにモテまくってコロコロ彼氏変わってたんだ~凄いでしょ」
こんな分かりやすい嘘はないでしょ?

「......まぁ俺もいたし、お互い様ってとこかな」
「え?」
「ん?俺だって学生時代、彼女の1人や2人いたよ」
「は、え、ちょ、聞いてない」
「だって聞かれなかったし」

私は隣に座っている玲人に問い詰めた。なんでも高校生の時に1人、社会人になってから1人付き合っていたらしい。どちらとも別れたが。
「私...玲人の初彼女じゃないの...!?」
「いや、この年で初彼女とかまずいし」
「わ、私は玲人が初彼氏なのにっ...!」
「............あー...」
「え!?何!?」
玲人は何かを察すると「なんでもないよ」と苦笑いした。
「うぅ......玲人の初彼女になりたかった...」
「なんでだよ...」
「初めてって特別感あるじゃん!!むぅ...!!いいもん!最後の彼女になるんだから!」
そう言うと玲人は「?」を浮かべた。

「玲人の彼女は私で最後。玲人の隣に居るのはずっとこれからも私で、結婚しても、子供が生まれても、ずっと私。死んでも離さないから」

「こっわ......てか重...」
「玲人だって初彼氏ってわかって嬉しかったくせに!顔に出てるぞ!!?あと玲人の方が重いだろ!!」
「重くないよ?...ただ」
「ただ?」


「ただこんなに可愛い葉瀬(ようせ)が、誰にも触れられてなくて良かったなって。触れるのは一生俺だけでいいし」


そう言って玲人は葉瀬の右頬に触れ、左の頬にキスをした。
「なんなら他の人と同じ空間にいて欲しくないよね。空気すら触れられるの嫌だし」
「.........それを世間では重いって言うんだよ」
「そう?俺なりの愛情表現なんだけどなぁ」
「...私には伝わってるからいいよ。でも限度は考えてよ?」
「うん。葉瀬は優しいね」
「玲人だけにだけどね」
玲人は私の頭を優しく撫でる。

なんとなく部屋全体が甘い雰囲気になった気がした。




あれ?私、玲人に嘘ついて驚かせる予定だったんだけど。


お題 「エイプリルフール」
出演 葉瀬 玲人

3/31/2024, 3:31:49 PM

しばらく電車に揺られていると、黒髪ショートヘアと茶髪セミロングの男性二人組が歩いてきた。
「わぁ...!綺麗~!」
「うわ......」
どちらとも違うタイプのイケメンで少しだけ黒髪の方が背が高い。黒髪はどちらかというと正統派で、茶髪の方はお姉さん系というか、なんというか。

「凄いな......あ、どこに座る?」
「......んー、私ここがいいかな?」
「じゃあそこにしよう」
「えっ。うん......ありがと」

前言撤回。黒髪の方は女性だった。
二人組は俺と通路を挟んで向かいの席に座った。
「見て!ピンクの空だよ!」
「本当だ......あ、青い鳥がいる」
「えっ、どこどこ」
「ほらあそこ」
「え?どこ?」
「あそこ!」
二人は頭を近づけて窓の外を見る。指を差して茶髪の男性は黒髪の女性に教えていた。

なんと微笑ましい光景だろう。まるで小さな子供たちを見ているみたいだ。

「あ、見っけ!青い鳥だ~!」
「凄いよね、俺初めて見たよ」
「私も!......あのさ、隣行っていい?」

おっと?これは黒髪の方攻めたな。

「え、うん。いい、よ...?」

おい茶髪、なんで疑問形なんだ。

「やった。ありがと~」
「...見にくくない?俺屈もうか?」
「んーん、大丈夫!こうするから」
そう言って黒髪は茶髪を抱き締めた、のか?
「ちょ...!いくらなんでも、それは恥ずかしいって...!」
「いーじゃん、誰も居ないんだし」

もしや、これは俺が見えてないということか。

確かに「俺が見えている」と設定してもいいが、このままにしておこう。なんなら薄く空間で仕切っていることにしよう。そっちの方が彼らの為だ。

「駄目?」
「...まぁそれで見えるんだったら、しょうがないよね」

許すんかい茶髪!!!ツンデレかよ!!と俺は心の中でツッコミを入れた。

「やった~」
「...落とさないでね」
「大丈夫、落ちるときは一緒だよ」
「落とすなって言ったよね?」

黒髪は嬉しそうにしている。なんだかんだで茶髪も嫌がってないし、寧ろ楽しんでる。


なんだか見てるこっちも嬉しくなって、心の中で『お幸せに』と呟いた。


四月が始まる。

次は彼らの事を書こうかな。


お題 「幸せに」

3/30/2024, 8:53:14 AM

昔々の遥か昔、心優しい天使が居ました。
天使は誰にでも優しく、皆から愛され、天使の中の天使の様な方でした。
でもそれを良く思っていない、悪い天使が悪戯を始めたのです。
しかしそれはすぐに気づかれ、皆で悪い天使を迫害し、底へと落としたのでした。

そうして心優しい天使は、いつまでも、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。

めでたしめでたし。


















と彼女はそういかないだろう。

迫害されたその天使は、本当は何もやっていなかったのだ。
わざとそう仕向けられたのだろう。
元々、その『悪い天使』は新しい天使の事など眼中に無かったのだ。彼女はそれが気にくわなかったのだろう。なんとも残酷な話だ。
『悪い天使』は天使の象徴である輪を取られ、羽を切断され、奈落へと落とされた。

よくある転生小説なんかだとこの後『悪い天使』が過去に戻って他の天使に復讐するのだが、生憎現実ではそんな事は起こらない。

これからも彼女は『悪い天使』として地を這って生きていかなければならない。

悪と呼ばれた『悪い天使』にハッピーエンドは一生訪れないのだ。


お題 「ハッピーエンド」
出演 ブロック・アンノウン

3/28/2024, 9:06:55 AM

「愛してるゲームしよ!」
「阿保?」
「アホじゃない!しかも英語バージョン!」
「常軌を逸した阿保だったか」
「なんでそうなるの!」

寝る少し前にリビングで二人、ドラマを見ていた時に突然始まった。葉瀬(ようせ)は頬を膨らませ、玲人(れいと)に抗議する。相変わらず玲人は冷ややかな目で見ている。
「普通の愛してるゲームじゃ面白くないでしょ?だから英語で伝えるんだよ。ちなみに私は英語が苦手だから調べてから言うね」
「...まぁいいや。なら俺も調べていい?」
「おっ、いいよ~じゃあ五分後にスタートね!」
そう言って二人はスマホとにらめっこを始めた。


「じゃあ始めようか、玲人」
「はいはい」
「まず私からね!」
葉瀬は勝ち誇ったような顔で玲人の顔を見る。頬に触れ、離さぬように目を合わせる。

「I’m mad about you」

「...なんて?」
「I’m mad about you!...その、あなたに首ったけって意味だよ...」
葉瀬は英文を翻訳すると、恥ずかしそうに目を逸らした。
「よ、葉瀬負けてるじゃん」
「玲人だって顔赤いよ~!?」
そうツッコミをすると、ふははっ、と葉瀬は吹き出す。
「意外とヤバイねこれ」
「...じゃあ次俺ね」
耳貸して、と葉瀬を近寄らせる。そして耳元で

「My heart is yours forever」

と囁いた。
「...マイハート......ふぉーえばー?」
「俺の」
「?」

「...俺の心は、永遠に葉瀬のものだよ」

そう伝えると、玲人はそっと葉瀬から離れた。
「......は、葉瀬の負けだね」
「...そう来ると思わなかった」
「予想外って事?珍しいじゃん...」
「うぅ......今日はこの辺にしといてやる...次は覚悟しろよ!!」

そう言って真っ赤な葉瀬は寝室へ逃げていった。

「......逃げるとこ間違えてるでしょ...」

そう呟いて、玲人も寝室へと向かったのであった。

お題 「My Heart」
出演 玲人 葉瀬

Next