白に塗れた青春

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8/4/2023, 10:20:31 AM

つまらない事でも話そうか。
ここには君と僕しか居ないんだから。
液晶越しの君との一期一会の出会いだ。
さて、つまらない事と言ったはいいものの…、僕にとってつまらないことが君にとってつまらないとは限らないね?
もし僕がここで「野球」なんて言って君が野球ファンだった日には、スクロールされて僕の命はここで終いだ。
万人にとってつまらないもの…思いつかないなぁ。
あ、そうだ。嫌いな奴の自慢話!これは傑作だ。
でも初めて出会った君と僕だ。自慢もクソもないだろう。そもそも僕は4分前に産まれたわけなのに。
もー…お手上げだ!ずるい手段だけど君が語ってくれないか?ね?一生に一度のお願いさ。
飛びっきりのつまらない話を頼むよ。

8/3/2023, 12:02:19 PM

昔、こんなお話を読んだことがあるよ。
男の子が迷子になるお話だ。どこかノスタルジーな雰囲気で溢れていたんだ。その話を読んだ時、私はまだ9歳、そう小学生だったのだけれど。どこか切なさを覚えたものだったな。
男の子は暗い町の中、電灯のあかりを追いながら迷った末に家に辿り着く。家の中では父が新聞を読み、母は「こんな時間までどこに行ってたの!」と叱りつける。ありふれた幸福のひと家庭。
そして男の子は卓上で冷めきった肉じゃがを食べて涙を流す。え?どうして流したかって?
男の子うぅん、男性は夢を見ていた事を自覚したからだよ。
《大人になった彼が望んだ夢》を未来の技術で叶えた。
SF小説っていうのかな、こういうジャンルを。
「何度も再現しようとしたおふくろの味がそこにはあった。」
彼がそう呟いた所で物語は終わるんだ。
めでたしめでたし…って形容詞が正しいのか私にはよく分からないのだけれど。
あはは、まぁそれだけの話だよ。うん、ちょっと思い出しただけの話なんだ。ところで、ねぇ、この世界ってキミの夢?

8/2/2023, 12:05:15 PM

「こんにちは、」
無機質な部屋に柔らかな女性の声が響き渡る。
「楓くん、体調はどう?」
「別に…」
楓と呼ばれた男性は窓から視線を逸らさずに無愛想に答える。
ニュースキャスターも笑ってしまうような、澄み渡る程の晴天の日だった。
「もー、冷たいんだから。」
困り顔で笑いかけながら女性は部屋へと足を踏み入れ、ベットに腰かける。
「……」
なおも視線を逸らさずに窓の外を見ている。
彼女も彼にならい、窓の外へと視線をなげかけると、
青々と天へと背を伸ばす植物が目に飛び込んできた。
赤、青、黄色_暴力的な程のビビッドカラーな花は彼の目を痛ませはしないのだろうか。
「ねぇ、」
どこか儚く危うい、青空と溶けてしまいそうな彼へと手を伸ばす。
ぎしとベットが音を立てた。
「ねぇってば、」
もはや彼のものでは無い柔らかな髪を撫でると、ようやくこちらを振り向いた。
「…うるさいなぁ、」
重たそうに点滴のついていない腕を上げ、弱々しいでこぴんを与える。
彼の照れ隠しの癖だった、彼は不器用なのだ。
「む、やったなぁ〜?」
わしゃわしゃと髪を撫でると、「俺は犬かよ」と小さく不服そうな声をもらした。
ひとしきり彼を堪能すると体を離す。
「ふふ、前よりも元気そうだね。」
「どうも。…で。何の用で来たの?今日平日だし、お前仕事は」
「え、今日は平日じゃないよ。土曜日だよ」
その言葉に彼は一瞬傷ついたような顔をし、またいつもの顔に戻りシャレを飛ばした。
"この病気のせいで、世間に置いていかれる気がするんだ"、と彼はいつぞやに語っていた。
「あれ、そうだったか。…ずっとここに居ると感覚が…夏休みの小学生の気分だ。」
「一言日記でも書いてみる?」
「バカ言え、俺の辛気臭い日記なんて誰が読むんだ。」
「私が読むよ。」