許してほしくて
ずっとここで待っていました
そのかいあって
あなたに出会うことが出来ましたが
その隣には
あなたにとっても幸福
わたしにとっての絶望がいたのでした
他者を理由に
ここにとどまり続けたわたしに
あなたは軽蔑の一瞥を向け
わたしの過ぎ去りし日々さえ
粗悪なニセモノにするのでした
[どんな私も許してほしかった]
マネジメントされたテレビ番組
菩薩様のように微笑む老婆
『お見合いだったのだけど、
そのひとの真っ黒に汚れた爪を見てね、
働き者だと思ったの』
はて、
私は、これから迎えに来る男の
どこが好きなのだろう
かわいいっていってくれるところ?
何でも買ってくれるところ?
真っ赤なFerrari?
テレビの老婆はなおも声を上げて笑う
『そうねぇ!
生まれ変わったらまた、一緒になってあげてもいいねぇ。
またきっと、苦労ばかりだわね!』
嗚呼、なんだ。
この老婆も私も
所詮はその人に愛される自分が好きなのだ。
細塵で最大の
老婆になっても愛してもらえるかという違いはあるが
それはその時考えればいい
私はいつもどおり鏡に妖艶に微笑んで、自分に言う
「いってきます」
[愛という戦略的侵略戦争]
パールアカシアの香りに
ふと立ち止まりおもう
「果たして、いつまで『いつもどおり』なのだろう」
この『いつもどおり』はいつからのものだろう
貴女はカミサマのところに家出をして
もう僕の名を呼ばなくなった
戀しくて足りなくて埋められなくて
ただふらりふらりと彷徨う『いつもどおり』
難しいお顔ですわね、と
昨日会ったばかりの女が隣手に微笑む『いつもどおり』
「帰ってくれ」
違うんだ、もう僕に還しておくれ
恐ろしく儚いくせに永遠の顔をするのはやめておくれ
[いつもどおりの魔法]
ぼくに欲望なんてものはないよ、と
ぎらついた目で貴方が言うものですから
わたくしはつい笑ってしまって
また貴方に執着されるのです
[無欲という欲望]
墨色の世界で
彼岸花だけが鮮明
すがるように手を伸ばせば
群だって拒絶