「私の日記帳」
2023年8月27日早朝
地球は気象予報士もびっくりの巨大隕石の落下により暗雲に覆われてしまいました
暴力が支配する時代が来る
時代の最先端をいく人達は感じ取ったんでしょうね
一斉にトゲトゲ肩パットと革ジャンを購入しモヒカンをこれでもかとおっ立てて改造バギーに跨がり街を破壊し始めました
指示待ち人間の私は会社に電話してこれからどうすればいいか聞きました
何寝ぼけた事言ってんだ、出社しろ!と言われたので自転車で会社まで
途中、動物園から逃げ出したゾウに鼻でビンタされてるモヒカンをスマホでパシャリ
これから始まる新生活の予感にドキドキしてみたり
でも私自身はこのまま変わることはないんだろうなって思ったり
とりあえず今日は明日の環境整備に向けてお掃除がんばります
「向かい合わせ」
探偵は一枚の紙を差し出した
紙の真ん中に妻の名前を書く
そして妻を取り囲む男性達の相関図…
Uber Eats ピザの宅配 ウォーターサーバーの営業 水道業者
「このラインナップ…来る者は拒まずって事ですか?」
「そうですね、一番回数を確認できたのはUber Eatsの男性ですね、ちなみにUber Eatsとはすごい食事という意味らしいです」
すごい食事…この探偵、なにが言いたい?
「その次に会ってるのが宅配ピザのLサイズの男性ですね、あ、違います…奥様がいつも頼まれてるピザがLサイズでした」
Lサイズの男性…どの部位の話だ?
「あとウォーターサーバーの男性と水道業者の男性とはマルチプレイを楽しんでらっしゃるようですね」
いや、言い方!探偵は彼等から妻の名前に向かって矢印を書き『すごい食事』『Lサイズ』『MP』と記入した
いや、書かんでも!!ここで私のHPはゼロになった
「裏返し」
アブラゼミの裏返し~…キモい♪
伊勢エビの裏返し~…キモい♪
シャコの裏返し~…キモい♪
母がよく歌ってくれた子守歌を口ずさんだ
すると背後から男がこう言った
「やれやれ、どうやら本物の味をご存知ないようだ、だから軽はずみにキモいとか言える、明日またここに来い、本物の味を教えてやる」
山岡と名乗った男はそれだけ言って消えた
そして何故か今日ここに来てしまった
あんな男の言うことを信じて…私、バカみたい
ゆっくりとした時間が流れる…
高くどこまでも青い空、険しくも美しい稜線…子供の頃から変わらないこの山の景色が大好きだ
ここは山……伊勢エビは海、シャコも海…アブラゼミは……まさか?
そう思った瞬間、背後から口に何かを入れられた
うぐぐっ!まさか?まさか!?
「大粒のアブラゼミを甘辛く煮た一品だ、これを口にしてまだ気持ち悪いなんて言えるか?言えないだろう?そしてお次はサッと塩を振っただけの臭みが癖になるアブラゼミの…」
あの日から故郷には帰っていない
「鏡」
何も釣れなかった…二週間ぶりの休日だったのに…こんなことなら家で寝てればよかった
なんだか浜辺が騒がしい…近所のチンピラだ、そいつらに羽交い締めにされてボディブローを食らってるのは…ウミガメ!?
ウミガメならいいか…
気配を殺し足を早める
「ちょっと待って下さいよぉ!」
若手芸人?…いやウミガメが喋ったのか!?
チンピラがこちらに気付く
逃げ出す僕、逃げる者を追いかける習性のチンピラ
目が覚めた…綺麗な人がたくさん…キラキラした場所…もしかしてここは竜宮城?
「それではお会計になります」
チンピラたちが取り出したのは…僕の財布!
キャバクラ!動けない!亀甲縛りにされてる!
「亀さん、ゴチになりまーす」
ピピピッ…ピピピッ…ピピピッ…
目覚ましが鳴る
2時間しか寝れなかった
鏡に写る僕はものすごく老けて見える、玉手箱でも開けたみたいに
「自転車に乗って」
いつの間にか自動車専用道路を走っている
これ…ネットに晒されるやつだ
まさか自分がこちら側の人間だったとは…
バイト先に入ってきた女子大生
四十の僕にとって最後の恋だった
1時間前、告白してフラれた
そしてがむしゃらに自転車を走らせていたらこんな事になってる
もしこれが夕方のニュースにでもなったら彼女にバレるかもしれない
そしたら「やっぱり私の判断は間違ってなかった」と思うことだろう…間違っているのに!
自転車のミラーに情けない顔が写る
いろんな事から逃げてきた人生だった
でも今は出口に向かって進むしかない
こんなに辛いことなんだ
でもこれをやり遂げられたら男としてレベルアップしてる気がする
もう一度、告白しに行こう
僕のダンロップシューズは勢いよく回転し始めた