入道雲。青空にもくもくと立ち上がる入道雲。夏をイメージすると候補に上がるものの一つである。入道雲が恋しい。
「こうも連日雨が降ると洗濯物が大変なんだよね……」
この時期はいくら干してもパリッと乾いた感じがしない。梅雨は毎年の事だし仕方ないのは分かっているけど、あの人をしっとりしたベッドに寝かせたくは無いのに。次に晴れた日は必ず屋敷中のシーツを洗おうと決意する。他の人の手も借りて、裏庭まで使ってシーツのカーテンをつくるんだ。全てはあの人に気持ちよく過ごして貰うため。
あの人の喜ぶ顔を思うと湿気の不快感も何のその。まだまだ頑張ろうと思える。
「……よし、洗い物終わりっと。干したら新しい服のデザインでも考えようかな?」
夏になると心がそわそわする。去年も一昨年も、彼らは夏になるとバカンスのように何処かに連れ出してくれた。特に説明も無いままあれよあれよと連れて行かれるのはびっくりしてしまうけれど、何処に連れて行ってくれるのだろうと冒険心が踊るのも否定出来ない。
最近彼らが集まって何やらヒソヒソ内緒話をしていた。私に気づくと何でもないような顔で誤魔化されたので私には秘密の事らしい。
彼らはよく私の為に、と色んな催しをしてくれるから無粋な真似はするまい。素知らぬフリでいつも通り過ごす。理由は何であれ、彼らが楽しそうに過ごしているのなら私に否やは無い。
さあ、今年はどんな夏になるだろう?
ここではないどこか。自分を知らない人達からは全く意識されず、自分の全く知らない世界。「いつもの自分」を忘れられるどこかに行きたい。
日常に疲れた人は少なからず、そういった願望を抱くそうです。気持ちは分かります。俺は特に、人と自分を比べてしまいますから。いっそ比べるような他人がいないような、ここではない、どこか遠くに。
そう、望む日が来たとしても。大丈夫ですよ、安心してください。
おいていきませんよ。一緒に行きましょうね。
君と最後に会った日。あの日は何を話しただろうか。
くだらない話だった気がする。当たり前のようにまた会えると思っていた。
幼い頃から何度も見ていたその夢は、その日以降二度と見ることはなかった。
「どうかなさいましたか?」
考え込んだ私を心配するように、担当執事が首を傾げて覗き込む。何でもないよと笑ってそれに返した。
ああ、そういえば夢の中のあの子も、こんな綺麗な瞳をしていた。
たまには、何か違う事を。そう考えてもやらなきゃいけない事も、したい事も、山程あるしそれ以上にだらけてる。
たまには、そう。いつもやってる事をやめてみるとか。自分を責めるのをやめてみるとか。見直すとか。
少しずつでいい。書いていこう。面白くない?なら面白い展開を思いつくまでネタ帳行きだ!