friends
あの人から見たら、自分は友達で、あの子も友達で、彼も友達で、自分とあの子も彼もみんな友達同士。あの人が見る世界はそんな平和なもので、絵本にだってできそうな関係性だ。ところがどっこい、現実は甘くない。もちろん、仲が良いのは大前提で、誰かが嫌いだとかそういうことは無いんだけど。きっと自分やあの子から見る世界とは180°違うから。
自分から見たあの人は、ちょっと特別な友達。何もかもをさらけ出して、あっちも何もかもをさらけ出してくれる距離の近い友達。多分親友って言葉が一番近いんだけど、それよりもちょっと特別っていう関係性。自分から見た彼は、大好きで大好きで大好きな友達。もうほんっとーにかっこよくてずーっと付き合いたい!ってアピールしてんのに普通にあしらわれてる。塩対応だけどそこもまた好きなの!そして、自分から見たあの子は、ちょっと特殊な友達。これはまた後で。
あの子から見たら彼はちょっと特別な友達。一緒に悪巧みしてあの人をからかったり、何か自然と彼の隣をゲットしている。みんなの年下という権利を最大限活用してかわいこぶっちゃってさぁ。彼もそれを普通に受け入れて、自分のことは遠ざけるくせにさ、もうひどい。そんなあの子から見たあの人は、大好きなのに素直に言えない友達。小学生によくある、好きな人をからかったりするあれ。もう本当小学生じゃないのによくやるよ。まだそういうところに幼さが見える。でも、だからこそあの人と仲良い自分は気に食わないらしい。何かと噛みついてきて、さらには当てつけで彼の隣を陣取る。
だから、そんなあの子から見た自分は、ずっと追いかけっこをしてお互いにないものを欲しがる友達。あの人と彼には見えない火花を散らしながら今日もお互いに牽制し合う友達。その牽制も追いかけっこもすごく楽しいけどヒートアップしたら結構面倒で。あの人と彼さえいなければすごく平和で楽しい、最高の友達!
消えた星図
星図が消えた。自分自身星に興味は無かったし、そんなものが消えたとしてもどうでもいいけど、授業で使うはずだったのにと涙目になった先生を見かねて手伝った。理科準備室をくまなく探したが見つからず。肩を落とす先生に気まぐれにもならない慰めの言葉をかける。想定よりも遅くに校舎を出たら、皮肉なことにも星がいつもより輝いていた。
愛−恋=?
成長することを見越されて大きめにされたが卒業までブカブカのままだったブレザーを着ることはなくなり、働いて社会人として認められるようになった。そんなこの歳で新たな式を解くことになるとは思わなかった。生活を共にしているその人から聞いたその式に対して、「なにそれ、なぞなぞ?」と答えたら違うと首を振って真面目に考えてと怒られた。またテレビかなんかで情報を仕入れてきたんだろう。いつもそういう問題を出したりいたずらをしてきたりしてこちらの反応を伺っているその人のことだから真面目に考えたとて碌なことは無いんだろうけど。それでも最近一緒に住み始めてからというものの恋人よりも家族のような安心感の方が勝っていたから、付き合いたての頃のような距離感でそういう質問を投げかけられるのはどこか懐かしくて嬉しかった。こちらも初心に戻ってちゃんと考えてやろう。えーと、愛−恋=?だっけ……やばい、全然わかんない。ヒント少なくない?愛?恋?あいひくこいわ…どういうこと?てかこれ決まった答えあんの?いや、まさか。なんか試されてる?答え次第で冷めたとか言われる可能性がなくもない。えっと、どうしよ…どうしよ……
「…あの、この前のさ。考えててやっと答え出たから聞いて。」
「この前の…?…うん。なに?」
「あのさ、やっぱりさ、今の状態って愛だと思うんだよね。付き合ってから結構経って、同棲もして、恋人っていうより人として好きっていうか。それで、付き合う前とか付き合いたてぐらいのあたりの状態が恋だと思うわけ。じゃあ今の状態から恋の部分引いたときに残ったのがさ、これから先長い時間一緒に過ごして、もっとときめかなくなったとしてもずっと一緒にいたいなって…だからさ、結婚しよ。」
「……うん、正解!!!」
梨
いつも通学する道にあるケーキ屋さん。毎月違う種類のケーキが出てて今は梨のタルトが期間限定らしい。平日は毎朝と毎夕通るけど、その割には一度も足を踏み入れたことがない。別に甘いものに興味がない訳じゃない。むしろ逆、甘いものには目がないしリュックの中にはチョコやらグミやら常にお菓子は常備してる。だけど入ることができない。せめて、カフェならコーヒーと一緒にケーキとか食べても普通なんだろうけど、明らかに内装やら客層やらが女性寄りというか。甘いものが好きってだけで単身でその空間に飛び込んでくのも難しいんだよな。いつもテラスやイートインスペースには同じ大学らしき綺麗な人たちがケーキを頬張っていて羨ましい。あぁ、いいな、俺も行きたい…食べたい…
そんなことをポロッと一番仲の良い友達に話すと、「え、何をそんなに気にしてんの?別に行けば良いやん。」ときょとんとした顔で返された。そんな簡単に言うなよ、入学してからずっと踏み切れてないんだよ…と言うと仕方がないなと言う顔で「今から行こーや。どうせ課題やらへんやろ?」と宣った。確かに課題をやるようなモードに入らず、文字数の埋まらないレポートを前にして、急激に甘いもの欲が止まらなくなって言い出したんだけども。彼の迷いのない歩みはケーキ屋まで一直線で、清々しいほど簡単にその扉を開けた。昼休みが終わったけどまだケーキという時間帯でも無いから微妙に店内は空いていた。そのことにちょっとだけホッとした。
「なぁ、何にすんの?」
「…これ!梨のタルト。」
「ん。じゃあ梨のタルト一つと、モンブラン一つ。」
爽やかな午後、5限目までのゆったりとした空きコマをこんなにも優雅に過ごすとは思わなかった。自然と笑みを浮かべながらその梨のジューシーな甘みを味わい、栗のほのかな甘みも楽しんだ。これまで食べられなかった期間限定のケーキが悔やまれるけど、これから通うなら問題ない。太ることはほとんど確約されたけどもはやなんでもいい。週一の楽しみができたことに微笑みを隠せなかった。
LaLaLa Goodbye
ばいばい、なんて言いたくなくて、そうやって歌って別れるように、軽やかに別れを交わせば、寂しくないような気がしていたけど、やっぱり涙は出るらしい。泣いて掠れた声から心地良いリズムを何度も寝る前に鮮明に思い出しては鼻を赤くする。