波音に耳をすませて
大学のメンバーで海。仲良い奴らどうしでひたすらビーチバレー楽しんだり水に浸かったりしてたのは楽しかったけど、ひたすらにはしゃぎたい奴らが男だけじゃとかなんとか言い出してそこらへんにいた綺麗な女の子に声をかけたりしたから飲み物を買ってくると適当に言って輪を離れた。せっかく仲良いみんなで来てるのに、知らない人いたら気つかっちゃうし、女の子が嫌いな訳ではないけど、そもそもおれイケメンじゃねーからかわいい子がいてもどうにかなろうとかなれるとかは考えられねーし。砂浜から離れたとこにある自販機で1人分のりんごジュースを買って、人が少なめな岩場の方に歩く。1人抜け出してめんどくさいやつ、というより大人数だから割と自由に離れたり戻ったりとしてるから特段変な行動をしてる訳ではない。ちょっとしたら戻るつもりだし。濡れた足とビーサンがペタペタして気持ち悪い。ちょっと歩いた先の岩場に適当に腰掛けてりんごジュースを飲む。波音と風の音に目を閉じて口の中の爽やかな味を反芻する。今は楽しい。楽しいけど、なんか違う。楽しいけど昔の方が楽しかったよなあと思う。どれだけ海に来たって波の音をじっと聴いていたって、昔から好きなりんごジュースを飲んだって、あの子どもの頃には戻れない。そんな当たり前のことを残念に思いながらぼーっと海を眺めていた。
遠くへ行きたい
深夜二時、思いつきで喋る私、遠くへ行きたいという独り言、二つ返事で車のキーを取り出す君。
クリスタル
夏祭りの時に200円を握りしめて行った宝石つかみどりのお店。ダイヤの形をした水色のやつと、指輪の形をした赤のやつがお気に入り。実家に帰って久しぶりに開けた大事なものを入れる箱。やたら厳重にハンカチにくるんで保管していたこの懐かしのクリスタルたちを発見した。まさか残っているとは思わず懐かしくなって笑みが溢れた。
「あかね、これママからのプレゼント。」
「え?!なにこれ!キラキラしてるー!」
キラキラしたプラスチックの塊を前にして誰よりも嬉しそうな我が子の顔。どんなキラキラしたものよりも子どもの頃の宝物よりも今はこの笑顔が大事だ。
夏の匂い
梅雨が明け始め出すと君が使いはじめる、あの柑橘系の汗拭きシートが夏の匂い。
カーテン
カーテンを付け替えに行くだけの要員としてでも、家に呼ばれるならそれは本望だ。