遠くへ行きたい
深夜二時、思いつきで喋る私、遠くへ行きたいという独り言、二つ返事で車のキーを取り出す君。
クリスタル
夏祭りの時に200円を握りしめて行った宝石つかみどりのお店。ダイヤの形をした水色のやつと、指輪の形をした赤のやつがお気に入り。実家に帰って久しぶりに開けた大事なものを入れる箱。やたら厳重にハンカチにくるんで保管していたこの懐かしのクリスタルたちを発見した。まさか残っているとは思わず懐かしくなって笑みが溢れた。
「あかね、これママからのプレゼント。」
「え?!なにこれ!キラキラしてるー!」
キラキラしたプラスチックの塊を前にして誰よりも嬉しそうな我が子の顔。どんなキラキラしたものよりも子どもの頃の宝物よりも今はこの笑顔が大事だ。
夏の匂い
梅雨が明け始め出すと君が使いはじめる、あの柑橘系の汗拭きシートが夏の匂い。
カーテン
カーテンを付け替えに行くだけの要員としてでも、家に呼ばれるならそれは本望だ。
青く深く
木曜五限の座席指定の講義。グループワークが度々あるから話すようになった隣の席の青野さん。学部は同じだけど学科が違うから普段は違う授業で見かけない。芸能人のような飛び抜けた容姿ではないけど、パーツの一つ一つが整っていてすごく無駄のない顔。同年代の女子ならもっと髪を明るくしたり、ふりふりしたスタイルや明るい色を好むけど、青野さんは黒髪で大体白や紺色の落ち着いた綺麗めなブラウスやワンピースを身に纏っている。まるでオフィスカジュアルを徹底しているOLだ。アクセサリーもつけずに素材そのままで勝負できているのがさすが青野さんだなと思う。所作が綺麗で、姿勢が綺麗で、言葉遣いも綺麗。まるで年上のように見えるけど実際は自分よりも1ヶ月遅く生まれただけの女の子。一見近寄りがたいのにふとした時に自分のくだらない冗談で笑った時のくしゃっとした顔がたまらなくかわいい。最初はつまらなそうな人だと色眼鏡で見ていた自分を裸眼でもっと見ていたいと思うほど夢中にさせた青野さん。木曜だし、五限だし、その後のバイトもだるいけど、この講義だけは休みたくない。青野さんがいるから。