カーテン
カーテンを付け替えに行くだけの要員としてでも、家に呼ばれるならそれは本望だ。
青く深く
木曜五限の座席指定の講義。グループワークが度々あるから話すようになった隣の席の青野さん。学部は同じだけど学科が違うから普段は違う授業で見かけない。芸能人のような飛び抜けた容姿ではないけど、パーツの一つ一つが整っていてすごく無駄のない顔。同年代の女子ならもっと髪を明るくしたり、ふりふりしたスタイルや明るい色を好むけど、青野さんは黒髪で大体白や紺色の落ち着いた綺麗めなブラウスやワンピースを身に纏っている。まるでオフィスカジュアルを徹底しているOLだ。アクセサリーもつけずに素材そのままで勝負できているのがさすが青野さんだなと思う。所作が綺麗で、姿勢が綺麗で、言葉遣いも綺麗。まるで年上のように見えるけど実際は自分よりも1ヶ月遅く生まれただけの女の子。一見近寄りがたいのにふとした時に自分のくだらない冗談で笑った時のくしゃっとした顔がたまらなくかわいい。最初はつまらなそうな人だと色眼鏡で見ていた自分を裸眼でもっと見ていたいと思うほど夢中にさせた青野さん。木曜だし、五限だし、その後のバイトもだるいけど、この講義だけは休みたくない。青野さんがいるから。
夏の気配
キュキュと独特の擦れる音がする床。重力が無いかのように軽やかに宙に浮くシューズ。高く跳んだ君。手から離れたボール。綺麗に弧を描いた軌道。音も無く揺らされたネット。サラサラの髪が張り付く額。茶色ばかりの背景によく映える鮮やかな赤色のユニフォーム。蒸された体育館の匂い。ああ、夏の気配がする。
まだ見ぬ世界へ!
みんなが当たり前のように前を向いて同じ方向に向かっているのが怖かった。本当にみんなが向かっているのは正解なの?なんでこの場にいれないの?私は怖いよ。みんなが笑いながら、楽しそうに、希望に満ちた言葉を発しながら歩いているのにそんなことは言えなかった。それでも君だけは立ち止まった私に気づいて、一緒に行こうと笑いかけてくれた。あの時に君が振り返ってくれなかったら大好きなこの場所に辿り着けなかった。新たな世界に連れてきてくれてありがとう。
小さな愛
恋ばかりを追い求めて、ときめかなくなってしまった君に思わず別れを告げた。今更、育ちかけの小さな愛はここにあったと気づいてももう遅い。