こひる

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3/20/2026, 11:34:32 AM

『夢が醒める前に』

憧れの女優とベッドの上で寝ている。

薄く目を開けたその顔が綺麗過ぎて、息を呑む…
その女優Aは、俺のことを甘い声で「B〜くん」と呼ぶ。
「やれやれ」と出た自分の言葉に違和感がある。

Aはこれから仕事あるが、少しでも、俺と長く居たいと、駄々をこねる。しかし、俺は「わがままは言わない約束だろ」と気持ち悪いことを言う。「え〜、でも、B〜くん、いつも忙しくて、なかなか会ってくれないでしょ?」女優のAに対して、俺は何をしている人間だったか…そもそも、ここはどこだ?真っ白な壁に囲まれ、ドアと窓が一つずつ、薄い色の木枠ベッドだけが部屋の真ん中にあるのみだ。窓から見えるのは、静かな海面だけで、今は昼のようだ。

Aは、ふてくされた顔つきで、のそのそと起き上がり、ドアから出ていき、トーストのみが乗った皿を持ってすぐに戻ってくる。「ん!」と、差し出された皿を受け取る。これは何飯だろうか…
Aは「やっぱり、今日はお仕事お休みして、B〜くんと一緒にいる。いいでしょ?」
「でも、Aが行かないと、たくさんの人が困るだろ?それに、仕事に支障を来さないようにするのが、俺たちが一緒に居られるために出された条件だったよね?」「そうだけど〜」
ん?そんなこと誰に言われたんだっけ?

その後も、わちゃわちゃと痴話喧嘩が続くが、「俺が?」という感じで、浮世離れした話が続く…

「ん?」

夢の中なのに、夢と気づいてしまう。夢の世界に意識が入り込めてないタイプの方かーーだったら、おい、まだ、起きるなよ?俺!今のうちに、もっともっとイチャついておくんだ!

「いつまで寝てるの!」
カバッと布団が剥ぎ取られる。仁王立ちで見下ろしているのは、母ちゃん。
涙目で「もう少しだけ、寝かしててくれよ!」

俺は実家住みだ。

3/19/2026, 11:43:17 AM

『胸が高鳴る』

力強く振り抜かれたのが、テレビ越しからでも分かる。

打球はグングン伸びていき、バックスクリーン左にポーンッと跳ねて落ちる。

これを見たくて、見ていた。逆転だ!

どうか、夢を見せてくれ。

3/18/2026, 11:36:45 AM

『不条理』

真っ赤な夕暮れ時、日課の散歩に出たところ、おばあさんが、土手沿い傾斜面の草っ原に頭を下にして、真っ直ぐの姿勢で倒れている...近くまで寄ってみるが、声がしない。最悪の事態も考えながら、恐る恐る声をかけてみる。
「あの〜、、、大丈夫ですか?」
おばあさんは、ハッと顔だけこちらを見返してくる。どうやら、息はあるようで安堵する。よく見ると、右手にはスイセンの花を握りしめている。
「どうされましたか?」
「見りゃ、わかるだろ、倒れてんのよ!!」
「はぁ、、、」
場が沈黙する。
「あの、助けましょうか?」
「そりゃそうだろ、あんた、このまま立ち去ったら、近所中に何言われたか分かったもんじゃないよ」
「はあ、、、」
「えっと、じゃぁ、どうしましょう。とりあえず、腕を引っ張りましょうか?」
「バカかい、あんた。わたしゃぁ、肩が痛いんだよ、痛みが酷くなったら、どう責任とるんだい!」
「はぁ、、、では、誰か呼んできましょうか?」
「バカッ!そんなことしてみな、わたしが近所中の笑い者だよ、考えたら分かるだろ」
「はぁ、、、では、どうしたら、、、」
「足りない頭でしっかり考えなっ!さあ、どうするんだい!」
さすがに、こちらも苛々してきた。そもそも、救助することを申し出て、なぜここまで言われなきゃいけないのか、この人はいったい何様のつもりか。
「おい、あんた、あれ、タバコは持ってるかい?」
「いえ、僕は吸いませんから」
「へっ、使えないね」
もう放って帰ろうかな、、、
「わたしの旦那はね、両足に人工関節が入ってて、ここに来てもどうもできやしない、その旦那が、わたしの帰りが遅くて心配になって、探し回ったら、どうする気だい!」
「・・・」
空は陽が傾き、あたりは薄闇に沈み始めている。
静かにおばあさんの頭側に周り、背中に両手を差し込み、起こしにかかる。傾斜面だから、グッと力を込めながら、ゆっくりーー
「なんだい、なんだい、急に、うわ、ぎゃっ、痛い痛い痛いっ」
もう一気に起こしてしまおう。これ以上、このばあさんには付き合ってられないーー

「なんだい、やるじゃないか。最初からそうしてくれりゃあ、よかったんだよ」

おばあさんは、手を高く挙げ、ハイタッチをしようと手を振り抜いてくるーー

おいっ、肩の痛みは、どうなった?

3/17/2026, 11:36:15 AM

『泣かないよ』

コイツから、しっぺとデコピンを受けまくってる。
マジでもうやめてほしい。勝負だから、泣き言言えねーけど、コイツ、絶対ゆるさんーー

暇つぶしに、俺たちが決めたルールはこう!
「ジャンケン先勝で、しっぺかデコピンを選んで、相手に弾くことができる」だ。

先勝は相手だった。「グー」を出す人間が多いという心理をうまく突いてきやがった・・・デコピンが、俺の突起のある形良いおでこを抉る。

次は「パー」だ。やはり二番目に多く出されるという統計を理解してやがる。ヤバいっ、すでにもう泣きそうだ、、、連続であればダメージの効果があるデコピンを弾く‼︎

次こそはと、「グー」を出すが、裏読みを読んでやがる、コイツはクレイジーだ。完璧だ。「パー」出しやがった。そしてーーやはりデコピンだ!!3回目であるため、やり方が板についてきてやがる!痛すぎるっ。

次こそは「チョキ」だ、、、「なっ!?グーだと?」
ここにきて、しっぺを選びやがった。もう限界だと思っていた、おでこではなく、今度は手首が新たな衝撃を受け、熱を帯びる。コイツ、次は手首を壊す気かっ、、、

えっ、デコピンに戻るのか!?トリッキー過ぎる。

泣かない、泣かない、泣いてたまるかーー
ごめん、もう無理、、、泣く。

もう、やめようや、こんな無駄な争いは、、、

3/16/2026, 1:26:00 PM

『怖がり』

進学のために、この街にやってきたA太はとても怖がりだ。

後ろから声かけると、「うわっ」と叫ぶ。
授業中、スマホの振動に、「うわっ」
アパートに遊びに行き、インタホン鳴らすと中から、「うわっ」と叫び声が聞こえる。

「A太は、本当に怖がりだな。ていうか、ビビり」
「まあ、うん、苦手なんよね。小学校のとき、林間学習の肝試しで、マジで気を失ったことがあるんよね」

A太は何かと理由をつけ、俺をアパートに呼びたがる。
一人で過ごすのが怖いそうだ。

「なんか、一人だと誰かに見られてたり、変な声が聞こえる気がするんよ。一人暮らしなんかするんじゃなかった」

「・・・・・・」

じゃあ、あの部屋の隅で体操座りをして、不自然な角度に首を曲げ、目の落ち窪んだ痩せた男はーー
A太には見えていないんだな。

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