『ずっと隣で』
中学生の頃に好きだった歌の歌詞を思い出す。
なんか、「ずっと隣で」って、やつだった気がする。
『もっと知りたい』
丑三つ時、、、
「シュッ」
「シャッ」
鋭いーー
広がる暗黒に、断末魔の叫び、獲物を射抜く二つの瞳
貪るような不気味な咀嚼音、、、
「マァ〜」
「ゴロゴロゴロ…」
お前は、いったい夜中に何やってんだ、もっと見てようか、タマ。
『平穏な日常』
ソファーに縛られている。
昨晩は疲れ果てていたーー
「だからぁ〜」要領を得ない話口調のくせ、こちらが質問を始めると、「体調が悪いから、また電話かけてきて」と逃げられる。
5日間続いているクレーマーの対応に心折れかかった。クレーマーの思いもよらない行動に伴い、対応に追われたうえに、もともとの業務の期限もせまられていた。翌日の公休日を死守するため、頭の中で優先順位を巡らせていく。とにかく、表面上だけでも、仕事が落ち着いたように周りに見せておきたい。確認電話がかかってくるようなことがあれば、せっかくの休みが台無しになってしまう。クレーマーについては、「また電話があった場合は、担当者不在のため明日必ず連絡すると伝えてほしい」と引継ぎしておく。結局は解決の糸口は見つからないまま公休を迎える罪悪感がそう言わせていて、休み明けにうまくいっていることは何もないだろう。会社を出て、取引先をまわり帰宅したときには、家族の夕食といつも楽しみにしていたバライティ番組は終わっていた。
眠たそうにする息子に「今日、父さん、たくさん怒られちゃった」とやめればいいのに話してみる。「じゃあ、たくさん反省しなきゃね」と、こちらの感情が揺さぶられることのない柔らかな声が返ってくる。妻は家では仕事の話は聞く気はないからと分かる雰囲気で、風呂に向かっていった。それならと、冷蔵庫を開け、ビールを出して一気に飲み干す。いつもなら一本までと決められているが、さらに二本目を持って、全身の力を抜くようにドスンッとソファーに腰掛ける。息子の話を「うんうん」と聞きながら、眠気に襲われる。うんうん……
ハッと起きるとソファーの上で朝を迎えていた。毛布はかけてくれたらしい。
妻は出勤の身支度を整えている。息子は直ぐにでも出れる準備ができている。
「もー、昨晩そのまま寝ちゃってたでしょ。ビールの缶も置いたままだったし。休みだからって、ダラダラしないで、用事済ませて、気晴らしでもしてきたら?」
妻は愚痴は聞いてくれなくても、心配はしてくれている。
「ああ、、、ありがとう。いってらっしゃい。気をつけて」妻と息子をソファーに寝たままの状態で手を振り見送る。
今日は、コンビニで支払い手続きして、映画館のクーポンが確か明日までだったはずだが何かいい映画やっていただろうか、先月から飲み始めることになったコレステロールの薬がなくなるから病院にも行かなきゃ、、、
急にクレーマーの顔と声が頭にくっきりと現れる。
休みにまで……
ふうっと息を吐き出し、スマートフォンで動画サイトを開く。とにかく落ち着きたいーー
穏やかな気持ちで毎日を過ごし、計画した休みを過ごせれば、どれだけ幸せなことか、、、
「ただいま〜」
息子はこちらの顔を見つけると駆け寄ってきて、矢継ぎ早に保育園であったことを話し始める。
「ただいま。えっ、私が出る時と同じ体勢のままじゃない。一日中そこにいたの?」妻は呆れた顔で言う。
何もしなかったけど、今日は三人でご飯食べれたら、それでいい。
『愛と平和』
ジョン・レノンのパフォーマンスは「Love & Peace」を当時の若者に文化・思想として広めた。その言葉がファッションとして取り扱われても、何も思わないよりはいい。訴えたい、訴える力がある人はたくさん叫べばいい。その言葉の意味を考える人が一人でも増えれば、それでいい。
「愛」と「平和」、どちらも大事なものだろう。
愛が満ち溢れた世界は平和だろうし、平和な世界なら、たくさんの愛が育まれる。
じゃあ、何をしたらいい?と悩まなくたっていい。
目の前の悲しみに悲しむことができ、可笑しなことがあれば笑う。そうしていれば、目の前の愛と平和は守られるから、そんな和を広げていけばいいだけのこと。
『過ぎ去った日々』
懐かしい匂いがした。
大好きだった。距離感に臆病な僕に、あなたの浸透は早かった。僕はあなたに合わせて、怒って、感動して、笑った。自分の価値観が「あなたと一緒だよ」って伝わってほしくて。
どうか、いつまでも一緒にいられますようにーー
今、通り過ぎたのは、あなただったのかな。あの頃と同じ甘い匂い。でも、あなたは僕を見つけることはできないだろうね。それでいい。あなたとの時間はあの時の中にだけ存在している。
どうか、今の僕に気が付かないで。