タバコは嫌いだけど
おいしそうにタバコの煙を吐く
パパの姿が好きだった
タバコをくわえながら
私のからまった釣竿の糸をほぐしてくれた
タバコをくわえながら
お昼どきにチャーハンを作ってくれた
煙がわたしにかからないように
上を向いてけむりを吐いていた
冬に肉まんを買ってくれて
私にわたしながら、パパはタバコを吸う
その灯りが小さくともる夜に
流星群をみにいった
さびしい景色も心地よかった
あのにおいに ふしぎと安心があった
目印のように
パパのいない世界で
白い吐息を吐く
何のにおいもない
からだには何の害もないけれど
涙はこぼれる
あの日一滴も出なかったのに
吹き抜ける風は父かな涙の日
変な話をしよう
信じなくていい
わたしは手の届きようのないあなたに恋をした
あなたの後ろには神さまがついていた
わたしはあなたに恋をしたから
神さまに願った
少しだけこの人の時間をくださいと
神さまは少し渋ったあと
望み通りあなたの時間をくれた
こちらに微笑むあなたも
わたしを欲しがるあなたも
くれた
だけど不釣り合いだから
なかなかうまくいかなかった
何年かして
あなたは神さまのものだから
わたしはあなたを神さまにお返しした
ほんとうの人生をおくらなくてはいけないから
あなたは悲しみ 泣いた
だけどあなたの悲しみは癒えるだろう
神さまがたちまち癒すだろう
わたしだってわがままゆえの傷だらけ
ふさわしくない人に恋をした
あなたのことが好きだった
今はそれほどでなくても
あなたがいた 神さまがくれた
ありがとうと言った
終わりを告げた
けれども
わかったのはひとつだけ
あなたに愛されたかった
慈しまれたかった
そのひとつだけ
気づけばわたしばかり愛して
慈しんでいた
もうあなたはいないし
からっぽの空間に名前を呼ぶだけ
あの人はやめなさい
ママは言った
どうして反対されると気になるのだろう
それならあの人にしなさいって言えば
わたしは興味をなくしたのかも
しれないのに
ママに似ていたの
困ったときの顔が 怒る唇が
鼻の形が 不器用なやさしさが
ママに似ていた
車窓を眺めて
あの人ときた町を横目に
わたしはそれ以上遠くへ行く
ざまあみろ
思い出は日々色濃くなって
あなたはどんどん遠くなる
忘れた日が一日もない
だからずっと遠くへ行かなきゃね
知らない町と 知らない人に会って
目まぐるしくしなくては
たくさん忘れていかなくちゃ